学校であった怖い話
>六話目(福沢玲子)
>G7

「君、何をいっているんだい?
……なんだか変だよ」
鈴木君は、眉をしかめたわ。
顔はきれいでも、性格は怖いなって思ったのね。
それで、彼女のような子には近付きたくないと思ってしまったのよ。

「え……」
平井さんは、驚いたわ。
自分の気持ちをいったら、いきなり鈴木君が冷たくなっちゃったんだもの。
戸惑っちゃうわよね。
そうしたら鈴木君は、何もいえない彼女を置いて、その場を去ってしまったの。

平井さんは、悲しんだわ。
占いがはずれてしまったんだもの。
そして彼女は、又お兄ちゃん子に戻っちゃったの。
次の日から、彼女はお兄さんのことばかり話したわ。

やっぱりお兄ちゃんが最高だって。
他の人は、嫌だって。
運命の人が現れるって占いは、はずれだったんだって。
でね、そんなある日のことなんだけど。
彼女、手に傷あとをつけてきたの。
ちょうど、彼女のお兄さんの傷と同じ位置にね。

その位置って、どこだと思う?
……手首よ。
自殺する時に、切る所。
みんな、びっくりして彼女に駆け寄ったわ。
彼女を、慰めようとしてね。
そうしたら、彼女の姿がふっと消えてしまったの。

……彼女、自殺していたのよ。
そう、彼女はその時この世の人ではなかったってわけ。
平井さんは、鈴木君とのことがある前に、お兄さんとの仲を占っていたそうよ。
そうしたら、こうでたんだって。

二人がいつまでも離れないでいると、どちらかが死ぬことになる、って……。
彼女はもちろん、それを信じたわ。
だから、お兄さんと離れようとしたのよ。
お兄さんよりすてきな人とめぐりあえるっていう、占いを信じてね。

でも鈴木君にはふられてしまった。
それで、彼女は考えたの。
兄と自分の、どちらかが死ぬまで様子をみるか。
どちらかの命を絶ち、一人だけ助かるか……。
お兄さんの手首に傷あとがあったのは、彼女がそのことで悩んでいたからなんだって。

お兄さんは、平井さんにこういったみたい。
お前がそんな理由で死んだら、俺も後を追うぞってね。
それで彼は、手首を切ってみせたんだって。
そうすれば、平井さんは早まって自殺なんかしないだろうって思ったみたい。

その後、鈴木君が現われて、お兄さんは胸をなでおろしていたようなんだけれど……。
平井さんはふられてしまったからね。
彼女は、もう自分が死ぬしかないって思ってしまったの。
失恋の悲しさも手伝ってね。
それで、手首を切ったのよ。

……ねえ、坂上君。
占いって、怖くない?
それが、本当に当たるのか。
それとも当たらないのか。
それは、自分が体験するまで分からないことだもの。

それにさ……。
占いをした後で、運命をそれにあわせて変えてしまう人もいるかもしれないよね。
私、平井さんが死んだのは、運命のせいではないと思うんだけど。
坂上君は、どう思う……?

わたしの話は、これで終わり。
でも……。
もう、六人とも話しちゃったね。
七人目は、まだ来ないし。
どうする?
坂上君……?


       (七話目に続く)