学校であった怖い話
>六話目(福沢玲子)
>K9

「わ…忘れたよ!! そんなことは忘れたっ!!」
近藤先生は、思い切り叫んだわ。
すると、彼女はいっそうドアを激しくたたいてね。
何度も何度も、怒鳴り声をあげたの。

「殺してやる!! 許さない!! 殺してやるっ!!」
ってね。
近藤先生は、もうパニックよ。
わけがわからず、ただドアを押さえて震えていたわ。
しばらくして、彼女の叫びはもっと大きくなった。

そして、激しくいい争うような声が外から聞こえてきたの。
近所の人が警察に通報したのね。
ドタドタという音と共に、彼女の声はだんだん遠のいていったわ。
彼女は警察に取り押さえられ、どこかに連れて行かれた様だった。

そして次の日。
近藤先生は、校長先生に呼びだされたの。
きっと、平井のことだ。
近藤先生は、緊張して生つばを飲み込んだわ。
校長先生は、彼をしばらく黙って見つめていた。

近藤先生がその沈黙に耐えきれず、口を開こうとすると……。
校長先生は、一言こういったの。
「平井が……死んだよ……」
平井さん、自殺しちゃったのよ。
近藤先生の態度に耐えきれずに。
彼女、随分すごいことをしたわよね。

ナイフで指を切ったり、近藤先生を追いかけたり……。
でも、そんな不安な状態の彼女を、先生は冷たく扱ったからね。
こんなことになってしまったのよ。
それでね、この事件の後、うちの学校の体育館には、ナイフをもった女生徒の霊が出るようになったんだって。

その霊はこんなことをいうそうよ。
「私の赤い糸、見せてあげましょうか……?
そしたら、あなたのも見せて……」
ってね。
平井さんは運命の相手をまだ捜しているみたい。
だからうちだけでなく、あちこちの学校の体育館に出るらしいわ。
きらきら光る、ナイフを持ってね。

わたしの話は、これで終わりよ。
でも……。
来ないね、七人目。
どうしようか。
ねえ、坂上君……?


       (七話目に続く)