学校であった怖い話
>六話目(福沢玲子)
>N8

「う、うわあああっ!!」
近藤先生は、平井さんが落としたナイフを拾うと、彼女をメッタ突きにしたわ。

「あぁああーーーーっ!!」
彼女は、金切り声をあげて苦しんだ。
「うわああっ、うわあああっ!!」
それでも近藤先生は、激しく彼女にナイフを突き刺したの。
何度も、何度も。

彼女は、必死で近藤先生の手を止めようとしたけれど……。
近藤先生は、夢中で彼女にナイフを振りおろしたのよ。
「うああああーーーっ!!」
近藤先生は、彼女が動かなくなってもナイフを振りつづけたわ。

そして彼女はただ、自分の血のシャワーを浴びるのみだったの。
「どうしました!?」
平井さんの悲鳴を聞きつけて、外にいた先生が駆けつけたわ。
すると……。

そこにあったのは、血まみれのナイフを持った近藤先生と、身体中を刺され倒れている女生徒の姿。
「こ、近藤先生……!!」
「あ、い、いや、これは……」
「ひっ、人殺しーーー!!」
「ち、違うんです! これは……!!」

すぐに救急車が呼ばれたけれど、平井さんは助からなかったわ。
近藤先生は、警察に連れて行かれてね。
いろいろ自供したらしいんだけど……。
彼がしたのは、平井さんっていう美人が、ずんぐりむっくりの近藤先生を愛したって話。

運命の相手だっていって、彼女から結婚を迫ったって話。
さらに、先生を体育館におびき寄せ、小指から神経を引きずり出して脅したんだって話……。
これは、近藤先生の妄想による事件だということになったわ。
美しい女生徒に妄想をふくらませついには殺人まで犯してしまったんだと……。

ねえ、坂上君。
近藤先生は、ウソなんてついていなかったのよ。
先生は、確かに平井さんの行動に脅えさせられていたんだもの。
わたしのお姉さんもいっていたわ。
近藤先生はその頃、何だかビクビクしながら平井さんに接していたって。

でもさ……。
理由はどうあれ、近藤先生は彼女を殺した罪を償わなくてはいけなかったからね。
警察のいうことを、黙ってきいたって話よ。

何で、そんな顔をしているの?
もしかして、疑っているの?
この話が、すべて近藤先生の妄想だって思っているの……?

とにかく、わたしの話はこれで終わりよ。
あなたが、どう思おうとね。
……でも、遅いね。
七人目。
どうしようか。
ねえ、坂上君……?


       (七話目に続く)