学校であった怖い話
>六話目(福沢玲子)
>P7

「近藤先生、今、平井が見ていましたよ」
「ち、違うんです。平井とは、本当に何でもないんですよ」
近藤先生は、おおあわてだったわ。
でも、ちゃんと他の先生に説明したの。
ことのいきさつをね。
職員室中の先生が、その話を聞いて驚いたわ。

そんな話が、本当にあるんだろうかってね。
でも校長先生は、近藤先生の話を真面目に聞いてこういったわ。
「それなら、このままじゃいけませんよ。
結婚する気もないくせに、そんな約束をしてはいけません。
さあ、早く平井を追いかけて、よく話し合うべきです」

ってね。

それで近藤先生は、走り去った平井さんを探しに行ったの。
校内中を、駆け回ってね。
彼女はなかなか見つからなかった。
教室にも、校庭にもいなかったのよ。

近藤先生は、職員室に戻ったわ。
「ひ、平井がいないんです……」
そういってね。
「平井はもう、帰ってしまったのかもしれません。
話は、又明日に……」

すると校長先生は、近藤先生を睨んでね。
「旧校舎は、捜してみましたか?」
っていったのよ。
近藤先生は旧校舎に向かったわ。
校長先生に促されたからね。

旧校舎の中はボロボロで、カビや木の匂いがたちこめていたわ。
木の廊下や壁は、けっこう腐っていてね。
所々に開いた穴から、ギザギザの木屑が覗いていたわ。
そして、ギシギシいう廊下。
近藤先生は、一歩一歩足を進めていったわ。
平井は、本当にここにいるのだろ

うか。

やっぱり、もう帰ってしまったのではないか。
なんて思いながらね。
そうしたら……。
後ろから、誰かが手を回してきたの。
近藤先生の首にね。
「ひ、平井……?」

先生は、思わずそういったわ。
その手は、ごつごつしていて硬かった。
とても、女生徒のものには思えなかったけれど……。
「近藤先生……?」
近くの教室の中から、声が聞こえてきたわ。
それは、平井さんの声だった。
彼女は泣いていたのね。

鼻をすすっている音が、ドア越しに聞こえていたわ。
でも……。
近藤先生は、廊下に立ったまま動けなかったの。
後ろから、誰かが首を押さえているんだもの……。
「ダメですよ近藤先生、女生徒を泣かしちゃあ。
まったく、あなたはどうしようもな

い人ですねえ……」
近藤先生の首は、ぎりぎりと締めつけられたわ。

「まったく。本当にどうしようもないですよ。
平井のようなかわいい生徒を」
「や、やめてく……うぐっ」
「あなたの様にさえない男が、どうして平井の運命の相手なんでしょうかねえ……」
「こ、校長……」

近藤先生は、翌日旧校舎で倒れていた所を発見されたわ。
首を絞められて殺されていたのよ。
それから、平井さんも亡くなっていたの。
彼女は、近藤先生に折り重なるようにして死んでいたのよ。

学校側は、平井さんと先生が、旧校舎で事故に遭ったんだってことで押し通したらしいけど。
これって、どういうことだと思う?

……坂上君。
うちの学校の校長先生が、よく変わっているのは知っている?
なんかさ、うちって、霊現象がすごいじゃん。
それで、うちの校長や理事長って、よく事故に遭ったり、精神がどうにかなっちゃったりしているらしいよ。

平井さんがいた時の校長先生も、今はいないしね。
その校長先生は、平井さんを気に入ってて、よくかわいがってたみたいなんだけど……。
なんかさ、平井さんの事件以来、どこかに雲隠れしちゃったんだって。
これって、どういうことかなあ。

ねえ、坂上君。
近藤先生は、確かに平井さんの運命の相手だったわけよね。
二人は、死ぬまで一緒だったんだから。
でも彼女は、そんな占いを知らない方がよかったんじゃないかなあ。
そうしたら、近藤先生を追いかけてこんな目にあうこともなかっただろうしね……。

わたしの話は、これで終わりなんだけど。
どうしようか。
七人目は、まだ来ないね。
ねえ、坂上君……?


       (七話目に続く)