学校であった怖い話
>七話目(新堂誠)
>5J4

「大丈夫ですか、細田さん」
僕は、猫撫で声を出した。
なんて偽善的な。
自分で自分が嫌になる。
でも、しょうがないよな。
僕だって、命が惜しい。

細田は、僕の態度を見て、妙な希望を抱いたようだった。
表情を明るくして、こびるように僕を見る。
「ひどいなあ。でも君ってすごいね。
君ならきっと、殺人クラブに入れるよ」

痛みをこらえて笑おうとしている。
「殺人クラブってね、日野様が部長の裏のクラブなんだ。僕から、日野様に頼んであげようか? 君をメンバーにしてくださいって。そうしたら、嫌な奴をみんなで殺すことができるんだよ」

こいつ……、なんてことをいい出すんだ。
僕に、殺人クラブに入れだと?
「甘く見るなよ。人を見てものをいえ! ふざけたことをいうと、ぶっ殺すぞ!」
僕は、細田の目の前で、血に染まったガラスをちらつかせた。

「ごめんなさい! ごめんなさい!
そんなつもりじゃなかったんだよ!
そうだよね、君はこんなクラブになんか入るような人じゃないよね?
代わりに、アンプルのある場所を教えてあげるよ。だから、許してよ」

「何だと!?」
僕は、一瞬自分の耳を疑った。
「お前、アンプルの場所を知っているのか!?」

「う……うん、うん、うん!」
細田は、何度もうなずいた。
本当に知っているようだ。
「嘘をついたら、ぶっ殺すからな!」
細田は、大きく首を振った。

「嘘なんかつかないよ。助けてくれるんなら、何でもするから。アンプルはね、旧校舎にあるんだ。僕ね、日野様が旧校舎にあれを隠しに行くのを見ちゃったんだよ。どこかは知らないけれど、絶対に旧校舎にあると思うよ」

「……旧校舎か」
「……あ! このことは、絶対に内緒だよ。
そうでないと、僕は殺されちゃうからさ。お願いだよ」
僕は、すがりつく細田を突き飛ばした。

「……旧校舎」
僕は、時計を見た。
残り時間はあとわずか……。
急がないとならない。
……しかし、その前に行っておかねばならないところはないか?
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