学校であった怖い話
>七話目(新堂誠)
>7V5

僕は、シャープペンを拾おうとかがんだ。
その顔面めがけて、福沢がくつをはいたままの足を蹴りあげる。
僕は、その一撃をまともに受けた。
「うわっ」
一瞬、視界がぶれた。
その隙に、福沢はアンプルを取り上げた。

「残念だったわね」
そういって得意げに微笑むと、福沢はアンプルを握り潰した。
薄い黄色の液体といっしょに、鮮血が一筋、二筋と流れ落ちる。
それをぺろりとなめて、彼女は笑った。
「ゲームオーバーだね」

そんな……。
そんな馬鹿な。
あんなに頑張ったのに、これで終わり?
僕はもう、死ぬしかないのか。
「素敵、その表情。もっともっと、悔しがって見せてよ。生きていたいって顔して」

福沢が嬉しそうにいう。
目がきらきらしている。
本当に楽しくてしかたないらしい。
彼女を見つめる僕の中で、どす黒い怒りが膨れあがった。
僕は、彼女の首を絞めた。
「きゃ……や、やめ……」

苦しがっている。
そうだ、もっと苦しめ。
僕の分まで。
僕が死ぬ責任を取って。
「…………っ」
もがいていた手がパタリと落ちた。

手を離すと、床に倒れこむ。
口から泡を吹き、福沢は死んでいた。
これでいい。
死ぬのも、一人でなければさびしくないだろう。
僕は、福沢の死体のとなりに座って、膝を抱えた。

夜明けを迎える前に、僕は死ぬ。
この旧校舎で、もしかしたら誰にも発見されないまま。
でももう、それでもよかった。
僕は負けたのだ。


       (ドクロエンド)