学校であった怖い話
>七話目(新堂誠)
>7AE8

「さあ、日野! 狙いを外すなよ!
僕の腹に思い切りナイフを突き立てろ!」
僕は、叫んだ。
「へへっ、あきらめたか!」
日野が笑いながら、突っ込んできた。
僕は、日野のナイフに全神経を集中させた。
これが最後の賭なのだ。

僕の運が強ければ、絶対に成功する。
狙いを外すな。
日野のナイフを、正確に受け止めるんだ。
外れれば、……死ぬ!
「楽になんなっ!」

「ぐっ!」
僕の腹に、鈍痛が響く。
次の瞬間、日野の顔に失望の色が広がっていった。
それは、日野にとって、あってはならないことだった。
「きさま……はかったな」

「どうした、日野? 顔が真っ青だぜ」
僕は左手で、腹に突き立てられたナイフごと日野の手を握りしめた。

そして右手はポケットからシャープペンをまさぐり出す。
一瞬の猶予もない。
僕はためらいもなく、右手を突き出した。
「ぐえっ!」
シャープペンは、日野ののどを直撃した。

パアッと、真っ赤な血が飛び散る。
「そ……そんな……」
ひゅーひゅーと、傷口から息がもれる。
そして日野の目は、ぐるりと回転し白目を向いた。
操り人形の糸が切れたように、ぺしゃっと地面に倒れる。
……死んだんだ。

僕は、ワイシャツの中から命を救ってくれた窓枠を取り出した。
今にも折れそうな、こんな腐った木が、僕を助けてくれたなんて。
手の甲で顔をぬぐう。
ベットリと、日野の返り血がついた。
……このまま帰ったら、きっと家族は驚くだろうな。

僕はクスクスと笑った。
同時に、涙があふれて止まらなかった。
僕は勝った。

なのに、このやりきれない気分は何だろう?
子供のようにしゃくりあげる。
…………………………僕は人殺しだ。

僕は人殺しだ。
その時、朝日がさし込んだ。
まるで、僕の罪を告発するように。


       (ドクロエンド)