学校であった怖い話
>七話目(新堂誠)
>7AM8

僕は、ポケットからドライバーを取り出して構えた。
日野が、ニヤリと笑う。
「おもしろい。獲物は、やっぱり暴れてくれないとな」
僕は、日野のナイフに全神経を集中させた。

「死ね、坂上!!」
来た!
突っ込んできたナイフを、僕はギリギリのところでよけた。
シャツが裂ける。

リハーサルなしのぶっつけ本番だったが、うまくいった。
でも、喜んでいるヒマはない。
空振りした日野は、体勢を崩している。
今しかない!
僕は迷わず、日野の肩にドライバーを突き刺した。
「ぎゃっ!」
もんどりうって日野が倒れる。

日野の肩には、ドライバーが突き刺さっている。
刺された肩をかばうように、握りしめている。

うっすらと血がにじんでいた。
「……何で、殺さなかった!」
日野が叫んだ。
そして僕を睨みつけると、悔しそうに唇を噛み締めた。

強く噛んだ唇から、血が滴る。
「……お前は、殺す価値もないからさ」
「見ていろ! お前を呪ってやる!
お前を呪い殺してやる!」
日野は、肩に刺さったドライバーを引き抜くと、それを自分の耳に突き刺した。

「ぎゃっ!」
日野は、短く呻いた。
そして日野の目は、ぐるりと回転し白目を向いた。
「……お…ま…え……を…の…ろ……い……こ……ろ…………し……て……や…………る」
奴は、倒れた。

日野が自ら命を絶つことは、決して予測できなかったことではない。
けれど、僕には止めることができなかった。
止める余裕もなかったし、もし余裕があったとしても、僕は日野を止めただろうか?

「……呪いたければ、呪うがいいさ。
僕は、お前の呪いなんか怖くない。
お前のおかげで、強く生きる自信がついたから」
僕の言葉に、日野の答えは返ってこなかった。
今頃、地獄行きの列車に乗っているはずだ。

僕は、校門の外にある公衆電話に入った。
もう、空の向こうに朝日が見え始めている。
僕は、ダイヤルを回した。

「……もしもし、警察ですか? 学校で殺人事件がありました。学校の場所は………………」
僕は、すべてを伝え電話を切った。
異常に眠い。
もう、起きているのがつらい。

僕は、ワイシャツの中から命を救ってくれた窓枠を取り出した。
今にも折れそうな、こんな腐った木が、僕を助けてくれたなんて。
まさに、奇跡だな。
僕は、電話ボックスの中に崩れるように座り込んだ。

……もう、目を開けているのもつらい。
僕は、目をつぶった。
そして、深い眠りに落ちていく。
目が覚めたら、今日ぐらいは学校を休もうか。
……薄れていく意識の中、僕の頭にパトカーのサイレンの音が鳴り響いた。


       (新聞部エンド)