学校であった怖い話
>七話目(荒井昭二)
>Z13

僕は、急に気力を無くした。
そして、今までのなにかをしなければという気持ちはどこかに消えてしまった。
せっかくきた道を、またとぼとぼと引き返した。
暑さの中、学校まできた自分がばかばかしく思える。
そして、蒸し暑い自分の部屋に入った。

僕は、ベッドに寝そべるとゆっくり目を閉じた。
そして、ゆっくり目を開けた。
隣を見ると、あの人形が僕に添い寝をしている。
僕の肌に、ぺったりと肌をつけている。
……人形の肌がひんやりと冷たくて気持ちいい。

僕は、残った感覚の中でそう思った。
……………………………………… …僕の肌の暖かさになじんで、人形の肌も暖かくなってきたようだ。
……………………………………… …いや、違う。

どんどんと、僕の体温が低くなっているのがわかる。
これは、人形が僕の体温を吸い取っているんだ。
まぶたが閉じそうになる。
人間て体温が低くなると眠くなるんだっけ……。

もう、このまま眠ってしまったら永遠に目が覚めることはないのだろうか。
僕の隣には、もうあの人形はいなかった。
その人形は、ベッドに寝ている僕を見下ろして立っていた。
僕を見て笑っている。
そして、僕を後ろに見ながら部屋から出ていった。

そうか、もうあの学校も人形の呪いから解かれるわけだ。
僕を最後の生けにえとして捧げた後に……。
なぜだか、もう失っていた感情が一瞬よみがえった。
仰向けに寝ている僕の目から、一筋の涙が流れるのを感じた。

体温が低いせいか、その涙は暖かく感じられた。
いや、そうじゃない……。
体温がこんなに低くなっても、涙だけはこんなに暖かいなんて……、僕は初めて知った。


       (ドクロエンド)