学校であった怖い話
>七話目(荒井昭二)
>AC12

何をしても無駄な努力だ。
今までに何人が無駄な努力をしただろう。
いや、選ばれた人はその努力しようと思う気持ちさえも起こらなかっただろう。
もう何もかもこのままでいい。

今さら、何をしたって結局同じだ。
明日から、学校へも行かない。
風呂にも入らない。
食事もしない。
トイレにも行かない。

もう何もしない。
生きるために、やらなければいけないことは全部やめる。
このまま人形に殺されるのなら……。
生きるためにすることが、全部ばかばかしく思えるから。

僕は、ベッドに寝そべるとゆっくり目を閉じた。
そして、ゆっくり目を開けた。
隣を見ると、あの人形が僕に添い寝をしている。
僕の肌に、ぺったりと肌をつけている。
……人形の肌がひんやりと冷たくて気持ちいい。

僕は、残った感覚の中でそう思った。
……………………………………… …僕の肌の暖かさになじんで、人形の肌も暖かくなってきたようだ。
……………………………………… …いや、違う。

どんどんと、僕の体温が低くなっているのがわかる。
これは、人形が僕の体温を吸い取っているんだ。
まぶたが閉じそうになる。
人間て体温が低くなると眠くなるんだっけ……。

もう、このまま眠ってしまったら永遠に目が覚めることはないのだろうか。
僕の隣には、もうあの人形はいなかった。
その人形は、ベッドに寝ている僕を見下ろして立っていた。
僕を見て笑っている。
そして、僕を後ろに見ながら部屋から出ていった。

そうか、もうあの学校も人形の呪いから解かれるわけだ。
僕を最後の生けにえとして捧げた後に……。
なぜだか、もう失っていた感情が一瞬よみがえった。
仰向けに寝ている僕の目から、一筋の涙が流れるのを感じた。

体温が低いせいか、その涙は暖かく感じられた。
いや、そうじゃない……。
体温がこんなに低くなっても、涙だけはこんなに暖かいなんて……、僕は初めて知った。


       (ドクロエンド)