学校であった怖い話
>七話目(風間望)
>A1

……いったい、何なんだ、この風間さんて人は。
これは、学校の七不思議を聞くための会合なんだぞ。
それなのに、これじゃあまるで、落語研究会じゃないか。
風間さん、こっちを見てニコニコ笑ってるよ。

仕方ない人だなあ。
せっかく今まで怖い話で盛り上がっていたのに、最後にこんな訳のわからない話を聞かされるなんて…………。
ああ、なんて悲惨な一日だったんだ。

ほかのみんなも、しらけきってるよ。
七人目も、いつまでたっても来なかったし……。
ああ、もう、やめた、やめた。

「それじゃあ、皆さん。怖い話を聞かせていただいてありがとうございました。七人目がとうとう現れず残念でしたが、今までに聞かせていただいた話をもとに、特集を組みたいと思います。それでは、これでお開きにしましょう」

あれ?
誰だろう、こんな時間に。
まさか、七人目が、今頃……。
僕は、慌てて振り向き、ドアのほうに目をやった。

「あ、日野先輩!」
僕は目を丸くした。
ドアが開くと、この会を催し、彼ら六人を集めてくれた日野先輩が顔を覗かせたからだ。
「おう、坂上。こんな時間までご苦労だな。
人の話し声が聞こえたからさ。
ちょっと寄ってみたんだよ」

日野先輩は、辺りをきょろきょろ見回すと、僕にそういってきた。
今日は忙しくて来られないといっていたけれど、やっぱり心配になって顔を出してくれたんだろう。
頼りになる先輩だ。

「あ、先輩。わざわざありがとうございました。結局、一人だけ来なかったんですけれど、七不思議の会合はどうにか終わりました。今、皆さんに帰っていただくところです」
日野先輩は、僕の言葉を不思議そうに聞いていた。

「お前、何いってんの? 七不思議の会合は明日だろ?」
「え?」
僕は、背筋に冷たいものが走り、慌てて振り向いた。

部室には……誰もいなかった。
「そんな! ……嘘だ!」
今までいたはずの人たちが、一人残らずいなくなっていた。
出入り口は、ここしかない。
それなのに……煙のように全員がいなくなってしまっていた。

「……どうしたんだよ、幽霊でも見たような顔をして。今日は、明日のための準備でもしてたんじゃないのか?
明日が本番なんだからな。
今日は早く帰って、明日に備えとけよ」
日野先輩は僕の肩をポンポンとたたいた。

僕の頭の中に声が響いてきた。
「だから、いっただろ? 僕たちはお前の守護霊様だってさ。楽しかったぜ。明日は本番だ。しっかりやれよな」
……そんな。
……じゃあ、彼らは本当に僕の……。

「先輩!」
「どうしたんだよ急に大声出して」
「先輩、お願いです! やっぱり、僕にこんな大役は務まりません。
誰か、……明日は誰か、ほかの人に代えてください! 僕はもう嫌です!」

その時、僕はどんな顔をしていたんだろう。
でも、僕の言葉を聞く日野先輩の表情から察すると、……きっと僕は本物の幽霊でも見たような顔つきだったんだろう。
僕の頭の中では、いつまでも彼らの笑い声が響いていた。


       (新聞部エンド)