学校であった怖い話
>七話目(細田友晴)
>D10

「もう、いい加減にしてください。こんな遅くに、常識がなさすぎますよ!」
僕は、思わず叫んでしまった。
細田さんは、一瞬絶句した。
「坂上君……きみ、よくも先輩の僕に、そんなことを」
「先輩なら、先輩らしくしたらどうなんですか!? 僕は眠いんです。失礼します」

一方的にまくしたてて、僕は電話を切った。
ちょっと、いいすぎたかもしれない。
でも今日は、あんな大変な体験をしたばかりなんだ。
少しくらい、気が立っていてもしょうがないだろう。

僕はそう自分を納得させ、ベッドにもぐり込んだ。
……神経が高ぶって、とても眠れそうにないと思っていた。
でも、いつの間にかウトウトしたようだ。
ぱたぱたという音で、目がさめた。

何だ?
カーテンがはためいている。
僕は、窓を閉めるのを忘れてしまったんだろうか。
起き上がろうとした時、部屋の中に誰かがいることに気づいた。

「お目覚めだね」
その声は、細田さん!?
「ど、どうして……?」
「君の住所を、名簿で調べたのさ。
鍵をかけ忘れるなんて、うっかり者だな君は」
細田さんはクスクス笑いながら、ポケットに手を入れた。

取り出したのは、果物ナイフだ。
夜目にも、きらりと光る刃が見える。
「坂上君は、僕のことを馬鹿にしたよね。僕はね、馬鹿にされるのが大っ嫌いなんだ」

昼間と変わらない口調だった。
だから余計、握りしめたナイフが不自然だった。
この人は、何をするつもりだ!?
「悪いけど、死んでもらうよ。僕は僕を馬鹿にするヤツを許さない」
細田さんは笑顔のままで、ナイフを振り上げた。
僕はいちかばちか、上がけを投げつけた。

バサッと細田さんにかぶさる。

「うわっ!?」
今だ!
僕は彼の横をすり抜け、部屋から飛び出そうとした。
しかしその時、首に熱い衝撃が走った。
目だけで見下ろす。

僕の首に突き立っている、果物ナイフ。
「危ないところだったよ。でも、僕の勝ちだね……」
嬉しそうな細田さんの声が聞こえる。
僕は血をまき散らし、冷たい床に転がった。


       (ドクロエンド)