学校であった怖い話
>七話目(細田友晴)
>E10

「今日は疲れたので、勘弁してください。行くなら、一人で行ってくれませんか」
僕は、そう断った。
「そうか……」
細田さんは、しゅんとしたようだった。
これで、気を変えるだろうか?
でも、そう思ったのも束の間。

「わかった。じゃあ一人で行くよ」
細田さんはそういって、電話を切った。
本気なのか?
大丈夫なんだろうか。
でも、僕は行かないといったんだし……。

細田さんが気にはなったけど、僕はベッドにもぐり込んだ。
疲れているのは本当だ。
少しでも眠りたかった。

次の日、学校に行くと、妙に騒がしかった。
何があったんだ?
クラスメートを見つけて、僕は声をかけてみた。
「あ、おはよう坂上。二年の細田先輩が、旧校舎で黒こげになって死んでたんだってよ」
細田さんが!?
僕は駆け出した。

旧校舎の前にはロープが張ってあった。
そしてその前に、黒木先生がいた。
先生は僕を見つけて、表情を曇らせた。
「細田が……」
「聞きました。何があったんですか?」

「わからない。でもきっと、旧校舎に潜む何かの怒りをかったんだろう」
先生は、そういった。
そうかもしれない。
細田さんは、昨日の話に執着していた。

僕にいった通り、あの壁の向こうを確かめようとしたんだろう。
ただでさえ、魔物の時間である真夜中に。
「旧校舎の管理は、これから厳しくなるぞ。
取り壊しが始まるまで、もう誰も中に入れないようにな」
黒木先生がいった。

先生も、昨日のことを後悔しているのかもしれない。
これでおしまいだ。
もう二度と、旧校舎の謎が解き明かされることはないんだ。
残念な気はしたけれど、ホッとした気分も大きかった。

人生にミステリーは必要だが、命あってのものだねだ。
僕はこれ以上、七不思議の件には突っ込むまいと、固く心に決めた。


       (新聞部エンド)