学校であった怖い話
>七話目(岩下明美)
>I9

もう僕らは、このまま取り込まれて最期を迎えるのか。
日野さんは、体中から薄桃色の触手を出して僕ら六人を取り込もうとしている。
もう、僕らは薄い膜に被われてしまっている。

僕は、急にこの化け物に自分が同化されることに抵抗を感じた。
無気力な自分の中でもなにかを感じたんだ。
そして、最後の抵抗を試みようと思った。
僕は目をつぶり、こん身の力と気持ちを込めた。

しかし、僕のこの気持ちとは裏腹にみんなとの同化は進んでいるらしい。
すると、ふと体中が軽くなった。
もう同化が終わったらしい。
僕は、そっと目を開けた。

すると、なにごともなかったように、僕は前と同じ場所に立っていた。
僕は、みんなと同化したわけではなかったのか?
そして異形の者として、体中に同化した人々の顔をつけているはずではなかったのか?

「……見事だ」
僕は、その声に振り向いた。
そこには白髪鬼……白井先生が立っていた。
「取り込まれて、同化した者たちはみな姿を持たない。その中で、一番精神力が強い者だけが生前の姿を保つことができる。日野も精神力が強いほうだったが、これほどまでに他の者を押さえつけられる精

神力はなかった。

精進しなさい。そうすれば、これまで取り込んだ者、これから取り込む者のいいところだけを引き出して、それを自分の思うがままに扱うことができるようになる。もちろん自分は自分として存在することは可能だ。実に素晴らしい。私の傑作だ。また君の様子を見にくるからね」

そういって、白井先生は去っていった。
……本当に、先生のいう通りなのか。
その時、僕の頭の中に響いた。
「助けてよ。ここから出たい。どうしてこんなところに……」
同化された者たちのざわめきが……。

そして、同時に僕の頭の中に、一つの欲望が頭をもたげているのに気づいた。
そうだ、これからどんどん同化して究極の生命体になってやる……。
絶対に。


       (ドクロエンド)