学校であった怖い話
>四話目(新堂誠)
>E8

そうか、削ってみるか。
そうだよな、このままにしておいても俺たちは死んでしまうからな。
どうせ死ぬなら、やるだけのことはやっておかないとな。
さあ、削るぜ。
……見ろ!
やっぱり、下に何か隠されている。
さあ、もっと削ってみるぜ。

俺には、何が描かれているかわかっている。
お前にもわかるだろ?
絶対に間違いない。
彼女は、あいつに殺されないためにこの絵を封じ込めようとしたのさ。

そうだ!
こいつだ!
彼女の家に入り浸っていたのは、間違いなくこの男さ。
この絵の中に住む男なのさ!
見たか、坂上?
今、お前、確かに見たよな。
この絵に描かれていた男が崩れ落ちていくのを。

……俺はな、思うのさ。
清水さんは、本当に寂しがり屋だったんじゃないかってな。
きっと、誰かにずっと側にいてほしかったんだと思う。
それで、彼女は、ずっと一緒にいてくれる男を作り出そうと思ったのさ。

彼女の得意な絵という媒体を使ってな。
どんな方法を使ったかは知らないけれど、とりあえず、成功したんだろうさ。
それが幽霊だったのか、悪魔だったのか、それとも彼女が作り出した妄想だったのか、それはわからない。

それでも、得体の知れない何かを呼び出すことには成功したのさ。
しかし、その男は最初は彼女のいうことを聞いていたが、次第に逆らうようになってきた。
自我を持ち、それを主張するようになったんだ。
……そして、悲劇が訪れた。

彼を絵の中に封じ込めようとした彼女を、あいつが殺してしまったんだ。
それでも、彼女はこの絵の男を封じ込めようとして、毎日毎日、幽霊になっては、少しずつこの絵を完成させようとしたんだろうな。
死んだ四人は、彼女ではなく、あの絵の男に呪い殺された。

彼女はあの絵の男のことを必死に訴えて、誰かに気づいてほしかったんじゃないか?
あの絵の男の存在、そして消す方法を。
それを防ぐために、秘密を知りそうになった四人の男を、奴は殺していった……。

そうは思わないか?
俺は、そう思いたいね。
もっとも、俺だって何も知ってるわけじゃない。
すべては、俺の想像上の話だけどな。

とりあえず、絵は消しちまった。
だから、今後はどうなるかわからないな。
もしかしたら噂通り、あの絵を見てしまった俺たちは、近いうちに清水さんに呪い殺されるのかもしれない。

しかし、あの男を消したことで、もう殺される心配はなくなったかもしれない。
まあ、結果はすぐにわかるさ。
近いうちにな。
……近いうちに。
ははは……。

それじゃあ、新聞部は戻ろうぜ。
次の奴の話を聞かなくちゃならねえからな。


       (五話目に続く)