学校であった怖い話
>四話目(新堂誠)
>G6

俺が彼女の秘密を知ってしまったからさ。
ある時遊びに行った俺は、勝手に彼女の家に上がり込んだ。
まだ子供だったし、よくそうしてたんだ。
それで、よく知ってる彼女の部屋に行った。

そこで俺が見たのは……絵と向き合ってる彼女の姿だった。
それだけなら、いつものことだ。
でも、彼女の様子は普段と違ってた。
口をすぼめて、何かを吸い込んでいるように見えた。
いや、実際に吸い込んでたんだな。

目を凝らすと、絵から彼女の口に、きらきらした光のような粉のような物が入ってくのがわかったんだ。
しばらくすると、彼女は満足そうにため息をついた。
「……また塗り直しておかなくちゃ」
そういったのが聞こえた。

どういう意味だろう?
俺は絵をよく見ようとして、半開きだったドアを押した。
小さくきしむ音に、彼女は飛び上がった。
こっちを向いた彼女は、初めて見る厳しい顔をしてた。
俺はあわてて謝ったよ。

ドアが開いてたから……というと、彼女の表情は少しやわらいだ。
でも、遊ぼうという俺の誘いはキッパリとはねつけられたぜ。
その時は、それだけのことだと思ったんだ。
でも、それから彼女は俺を避け始めた。

不思議に思って、いろいろと考えるうちに、彼女が抱えていた絵を思い出したんだ。
振り向いた時にチラッと見えたけど、とても古びてて、特に彼女自身が描かれた部分は、ひびまで入ってたんだ。
でも前の日に、俺は同じ絵を見てる。

その時は、そんなに古びてなかった。
美術館で見た絵みたいに、百年や二百年は軽く経っていそうな古さだったんだぜ。
そういえばあの時、彼女は絵から何かを吸い込んでいた。

ひょっとして、絵の生気を吸っていたんじゃないかと思ったんだ。
生気っていうのとは違うかもしれないけど、とにかくそんなような物をさ。

……だから彼女が幽霊になって、自画像を完成させようとしてるって話を聞いたときは、やっぱりと思ったぜ。
絵の生気は、彼女のエネルギーだったのかもしれない。
それも、絵の中の人物の生気がな。

なんで他の人間の絵じゃ駄目かはわからないけど、彼女のナルシストさが鍵じゃないか。
だから自画像を完成させて、たっぷり生気を吸収しようとしたんだと思うぜ。
そうすれば生き返れたのかもな。

……でも、彼女は生き返っていない。
やっぱり不可能だったんだろうか。
絵の返り討ちにあったんだろうか。
それとも、俺の思い過ごしなのかな。
でも俺には、生き返りたいという彼女の怨念が、あの絵を取り巻いているような気がしてならねえんだ。

死んだ四人は、その怨念にとっ捕まって生気を吸い取られたんじゃないかってな。
だとしたら……あの絵に近づかなきゃ、命の心配はないってことなんだがな。
信じられなきゃ、それでもいいぜ。

さて、俺の話はこれで終わりだ。
お次は誰だ?


       (五話目に続く)