学校であった怖い話
>五話目(荒井昭二)
>J7

荒井さんはやっぱり死んでなかったのか?
僕は風間さんを押しのけ、荒井さんの腕をつかんだ。
「早く出てください、荒井さん!」
荒井さんは僕を見た。
次の瞬間、荒井さんの腕がボロリと落ちた。

腕の中は空洞だった。
中に詰まっていた綿くずのような物が、バッと飛び散った。
綿くずじゃない。
これは羽虫なんだ!
ゼイゼイいっていたのは、体の中でこいつらがこすれあってた音なんだ。

燃え上がる火に飛び込んでいる。
その中の数匹が、火のついたまま僕に向かってきた。
やめろ、こっちへ来るんじゃない!
羽虫の炎が、僕の髪を焦がす。
振り回した腕を、誰かがつかんだ。
風間さんだ!

ヤケドで人相が変わっている。
憎々しげな目が僕をにらんでいた。
おまえも道連れだ。
そういう声が聞こえた気がした。
握られた腕が、ジリジリ灼ける嫌な臭い。

火の玉と化した羽虫が、いくつもぶつかってシャツを燃やす。
耳元で渦巻く炎の轟音で、何も聞こえない。
僕は炎に包まれた。
嫌だ!
こんな死に方は嫌だ!!

僕は助けを求め、空を見上げた。
星が出ている濃紺の空に、たち昇るかげろうとオレンジ色の炎。
僕たちの命が燃えていく光景は、この上なく美しかった。
その様子を見つめながら、僕の意識は暗黒に沈んでいった……。


そしてすべてが終った
              完