学校であった怖い話
>七話目(岩下・福沢)
>G14

僕は、とにかく自分のうちに帰ることだけを考えた。
とにかく走らないと。
走って走って走りまくるんだ。

幸い、こんなものをかぶっていても人目につくことなく家に逃げ帰ることに成功した。
僕は家に飛び込むと、玄関のドアの鍵を閉めた。
そして、台所へ行ってみた。
夕方なので、母さんは食事を作っていた。
「母さん!!」

僕は、母さんの後ろから声をかける。
「遅かったわね。今日は、父さん残業で遅くな……、ひーっ!!」
母さんは、振り返りざまに手に持っていたお玉を落とした。
しまった!
このマスクを取ることをすっかり忘れていた。

……あれ?
取れない!
と、取れないよ!
い、痛い!
取れるどころか、引っ張るとものすごく痛い。
……そういえば変だ。
最初は生臭くて気味悪かったこの頭も、今は妙になじんでいる。

まるで、僕の頭のように……。
それに、よく考えれば変だ。
風間さんの頭ほどしかなかったものが、どうして僕の頭に入ったんだろう。
サイズが合わないじゃないか!

母さんは、まだ怯えているようだ。
僕は母さんに訴えた。
「母さん! 僕だよ!! 修一だよ!」
そして、母さんは僕に向かって走ってきた。

「修一、やっとあなたも一人前になったのね!! 母さん嬉しいわ。今日はみんなでお祝いよ。地球人と同化して三十年。私たちも、やっと普通に暮らせるようになったし。
私は今、幸せよ」

母さんは、そういって僕を抱きしめた。
ちょっと、なにをいっているんだ母さんは……。
すると、母さんはあごに手を当て勢いよく皮膚をはいだ。

例のアンモナイトの頭だ。
「母さんもあなたと同じ年に、大人の仲間入りをしたのよ。嬉しいわぁ。今からお赤飯炊いて間に合うかしら。会社に電話してお父さんに早く帰ってきてもらうわね」
僕のマスクと同じ顔が言う。

「ただいまー」
僕の姉さんが帰ってきた。
「あら、あんたもやっと大人の仲間入りね。私なんか中学生の時よ。
早いでしょ? ませてたのかしらね」

姉さんがなにげない顔でいう。
なにげない顔をして、いうことじゃないと思うんだけど……。
ということは僕の家族は、スンバラリア家族だったわけか?
風間さんのマスクが取れなくなったのは、僕がスンバラリア星人だったから?

僕がちょうど成人の肉体変化をとげるのと同時に、風間さんのマスクをかぶったから?
なにか、脱力感が僕をおそう……。
でも、よく考えたらこれはこれで幸せなのかもしれないけど……。


       (新聞部エンド)