学校であった怖い話
>七話目(岩下・福沢)
>I14

僕は、走りながらマスクを取ろうとした。
「!?」
マ、マスクが取れない!
きっと、無理矢理顔にはめたからだ。
病院に行けば、なんとかなるかもしれない。
僕は、怪しまれないように新聞紙を拾って頭からかぶせた。

ひょっとしたら、このほうが怪しまれるかもしれないけど。
幸い、こんなものをかぶっていても人目につくことなく病院に到着することに成功した。
僕は裏口からそおっと入った。

この病院は、僕の家族のかかりつけだ。
担当医の田中先生のいる部屋へ走った。
僕は部屋のドアをゆっくり開けた……。
先生はまだいないようだ。
なんとかして、このマスクをはがしてもらわなければ。

僕は先生の机の下に身を隠した。
三十分ぐらいたっただろうか。
田中先生が部屋に入ってきた。
田中先生は少し小太りだ。
趣味も、ちょっとおたくっぽいけど僕は好きだ。
先生は明かりをつけた。

「先生!」
僕は机の下から飛び出していた。
「うわっ!!」
先生は驚きのあまり、もんどりうって倒れた。
僕は半泣きでいった。
「先生! 坂上です! 僕は坂上修一です!」

先生は、ろうばいしながらも僕にいった。
「ど、どうしたんだい? その頭は? 本当に坂上君かい?」
「田中先生!! 聞いて下さい……」
僕は、せきが切れたように今までのことをしゃべりまくった。
先生は、しばらく黙っていた。

「……うーむ。今までの話を聞くと、本当に君は坂上君のようだね。どれちょっと見せてごらん。ほうほう……。ふむふむ……」
先生は、僕の顔とマスクの継ぎ目をていねいに調べた。
「わかった、僕がなんとかしてあげよう。これから、すぐ手術室にいこう」

先生は僕をかくまいながら、手術室へ連れていってくれた。
やっぱり田中先生は頼りになるなぁ。
手術室の中はひんやりしていた。
「さあ、この手術台に横になってごらん。麻酔をかけるよ。君が目覚めたときには、このマスクもきれいに取れているはずさ」

僕は、先生のいう通りに手術台に横になった。
「はい、これから十数えるからね。すぐ眠くなるよ。一、二、三、四、五、六……」
意識が遠くなる。

僕は、ゆっくり目を開けた。
……僕は、今までずっと眠っていたのか。
田中先生がのぞき込んでいる。
「先生!! ぼくはもとの顔に戻れたんですね!?」
田中先生は笑っていった。

「坂上君の名前を使うなんて許せんやつだ。
お前のような、得体のしれないエイリアンは僕たちの研究材料になるといい! ははは!」
そんな、先生は僕を信じていたわけじゃなかったのか!?

僕は先生にいった。
「先生、僕はあのマスクをかぶっていただけなんでしょう?」
「ばかをいうんじゃない。あれはマスクなんかじゃない。ちゃんとした、お前の皮膚だ。よくそんなウソを、ぬけぬけといったもんだな」

僕は体を動かそうとした。
「か、体が動かない!」
僕の体は、ベットにベルトで縛りつけられている。
「逃げられたら困るからね。縛らせてもらったよ。大事な研究材料だからね。おとなしくなさい」

田中先生の高笑いが病室に響く。
僕は先生の研究材料として、生き続けることになったらしい。
こんな姿では、もうなにをいっても誰も信じてくれないだろう。
こんなのってないよ!!


       (ドクロエンド)