学校であった怖い話
>七話目(岩下・福沢)
>P10

「すみません。こんなつもりじゃなかったんです。どうか、許してください。僕は本当は地球人だったんです。僕は、善良な一般市民であって、間違っても地球防衛軍の者ではありません」
長官を殺しておいて、善良な市民はないよな……と自分でも思った。

風間さんは、それでも僕のほうに一歩一歩、確実に近づいてくる。
ダメだ、僕がどんなに謝ったって彼は聞いてくれない。
か、風間さん、それ以上近づいたら僕たちは肌が触れてしまう。
ああっ、もう僕はおわりだー!!

「……? ぎゃっ!」
僕は叫んだ。
風間さんが、僕のほうに倒れてきたからだ。
僕は、どっさりと正面から風間さんを抱きかかえる体勢になっていた。

なにか、こげ臭い匂いがして僕は風間さんの背中を見た。
彼の背中には、焼けただれた穴が一つぽっかりと空いていた。
僕は、風間さんを抱き抱えたまま顔を上げた。
すると、部室の入り口に微笑みながら新堂さんが立っていた。

「し、新堂さん!!」
新堂さんが微笑みながらいった。
「君たちが気になって、部室の外から様子を見ていたら、あんのじょう風間は君を襲おうとした。スンバラリア星人は恐ろしいやつらだ」
僕は新堂さんをよく見た。

よく見ると、新堂さんは変なかっこうをしている。
ピンクのぴちぴちしたウェットスーツに身を包み、しかも髪の毛までピンクときたもんだ。
右手には、見たこともない銃を持っている。
し、新堂さんって……、何者?

僕のいぶかしそうな顔を見て、新堂さんは気づいたようにいった。
「ああ、お前、俺のことが不思議なんだろ?
こんなかっこうをしているしな。そうさ、おれは風間と同じ異星人だ」

ちょっと、一難去ってまた一難じゃないか。
……助けて。
僕が怯えているのを感じたのか、新堂さんは続けて話した。

「心配しないでくれ。俺は、同じ異星人でもスンバラリア星人とは違う。実は、俺はウンタマル星人だ。
俺の故郷、ウンタマル星はスンバラリア星人に侵略されて皆殺しにあった。俺は、たまたまほかの星に行っていて助かった。それが地球さ。

俺は、結局地球に永住するはめになった。あの悔しさは、絶対に忘れない。偶然にも、こんなところでスンバラリア星人を退治することができるなんて、俺は今非常に嬉しい」
……あんなことがあったあとだからもう驚きもしない。

新堂さんは、僕に危害を加える異星人ではないようだ。
けど、こんなに異星人が僕の周りにいていいのだろうか。
こんなにも割合が高いと、僕が地球人だと思っているひとでもひょっとして……。

……僕らは、いつも危険と隣り合わせなんだ。
「君は僕の秘密を知ってしまった。
君には、悪いが記憶をいじらせてもらうよ」
そういうと新堂さんは、僕の額に手をかざした。

僕は、気が遠くなるのを感じた。
…………………………僕は、なぜここで倒れているのか。
…………………………新堂さんは、僕の記憶を消すのに失敗したようだ。

あの時のことは、この頭にしっかりと覚えている。
これは、新堂さんが記憶を消すことに失敗した代償だろうか。
あれから僕には、ありとあらゆる霊が見えるようになった……。
これで、怖い話の七話目もばっちりさ。


       (新聞部エンド)