学校であった怖い話
>七話目(岩下・福沢)
>Q12

とりあえず逃げてみようか……。
この場の状態を改善するより、逃げたほうがいいのはわかっている。
僕はダッシュした。

そして僕は、部室の入り口の引き戸に思いっきりアタックした。
バンッ、という音と共に引き戸ははずれ、僕は廊下に転がった。

やった、成功した!!
今度こそ逃げることができる。
僕は、廊下を見て言葉を失った。
学校の廊下には、植物の根のようなものがびっしりとこびりついていた。
僕は、逃げ場を失っていた。

「君は純粋な地球人だったんだろ? もう逃げられないよ。さっきスンバラリアの同胞が、地球全体に特殊な寄生植物の種をまいたからね。地球はもうじき養分を吸い取られ、しぼんでいくだろう。地球を支配しようとしたけれど、君たち地球人はとても扱いにくいんでね。支配するなら、皆殺しにしたほうがいいと思ってさ」

風間さんは、いつのまにか僕の後ろに立っていた。
「さあ、君もこの植物の栄養になるんだよ」
風間さんはそういうと、右手で合図した。
すると、廊下にこびりついていた根が僕のほうに向かって伸びてきた。

ザワザワとざわめきながら。
「もがいても、ムダだよ。大丈夫さ、痛みは感じないからね」
風間さんは、そういって僕に笑いかけた。
「うわああーーーー!!」
無数の根が、僕の体を取り囲む。

すると、不思議な感覚が僕を包んだ。
気が遠くなる……。

……僕は、生きていたのか?
死んでいるんだったら、こんなに意識ははっきりしてないはずだと思う。
ゆっくり目を開けた。
そこには、異常に大きな木にぶら下がっている人間の頭があった。

よく見ると、みんな目を見開いて目玉をきょろきょろさせている。
みんな、自分たちが頭だけになっているのを驚いているようだ。
そういう僕も頭だけのようだ……。

あいにく、声は出ない。
すると、向こうからスンバラリア星人がやってきた。
空を飛ぶスクーターのようなものに乗っている。

「この木は、根で吸い取った生物と同じ形の果物をつけるんだよな」
「本当に熟していておいしそうだ」
スンバラリア星人は舌なめずりをすると、僕たちの頭と木の幹をつないでいる、茎の部分を切り取り始めた。

「いつも思うけどさ、収穫時期は大変だよな」
彼らは、僕たちの頭を果物のように収穫し始めた。
僕たちはもう、スンバラリア星人の食料としてしか存在する価値がないらしい……。


       (ドクロエンド)