学校であった怖い話
>七話目(岩下・福沢)
>V11

とりあえず、踊ってお茶をにごすしかないかもしれない。
でも、なにを踊ればいいんだ。
僕が知っている踊りなんて、フォークダンスしかないのに。
ええい、ままよ。
「ちゃらちゃらちゃららららー、ちゃちゃんちゃちゃちゃ!!」

僕はメロディを口ずさみ、一人で踊り始めた。
もう、恥ずかしいなんて思っていられない。
そして、僕は部室のテーブルの周りをぐるぐると回った。
僕は風間さんを横目で見た。
風間さんが渋い顔で僕を見ている……。

彼の視線が痛い。
とにかく踊り続けないといけない。
この均整を崩したくない。
僕がここで踊りをやめたら、なにが起こるかわからないからだ。
その時、風間さんが沈黙をやぶった。

「坂上君、もういいよ。踊りをやめたまえ。
君がスンバラリア星人だということは、立派に証明されたよ。君は、スンバラリア星人の中でも勇敢な部族、コッペッポの民だということが証明された。あの踊りは、僕も一回しか見たことがないんだが、確かにそうだ。コッペッポ族に昔から伝わる踊りだ」

な、なんだかしらないけど話はうまい具合に進んでいるようだ。
その時、けたたましいブザーの音が鳴り響いた。
風間さんは、ポケットからワッペンのようなものを取り出すと口元に近づけた。

「はい、こちらコードネーム135SBR。通信機が警報音を発信していましたが、どうかしましかたか?」
風間さんは、ワッペンに耳を近づけている。
「えっ!? そんな……。あ……」

彼はそのままぼう然としていた。
なにか、ただごとではないという感じを受けた僕はそっと聞いてみた。
「……どうかしたんですか?」

「もう、僕たちは終わりだ。……今、母国から連絡を受けたよ。スンバラリア星がウンタマロ星人の襲撃にあい、壊滅寸前だということをね。これが最後の通信だ……。僕たちはかろうじて助かったが……。地球を侵略するどころではない。…………………………この地球で、地球人として生き延びるしか方法はないようだ」

彼は、肩を落としていった。
僕は、あまりのうれしさに彼にわからないように小踊りした。
笑いが止まらない。
僕はまじめな顔をして彼にいった。

「風間さん、助かった僕たちだけでも生き延びるんですよ。スンバラリアの民には、なんていったらいいかわからないけれども……。僕たちは彼らの分も生きなければならないんです」
僕は、風間さんの肩に手を置いて窓辺に近づいた。

すっかり暗くなった空に、満天の星がまたたいている。
そのとき、すぅっと流れ星が尾を引いた。
「風間さん、見てください。流星を……。あれは、スンバラリアの死んでいった同胞たちですよ。そう、彼らは星になったんです。あっ、ほらまた流れましたよ……」

梅雨明け間近の夜空に、夏の星座が見えていた。
僕たちは、それをいつまでも見ていた。


       (新聞部エンド)