学校であった怖い話
>七話目(岩下・福沢)
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とりあえず踊って、お茶をにごすしかないかもしれない。
えーと、今流行の踊りなんて踊れないし。
おばあちゃんが、家で練習しているのしか見たことがないけど……。
僕は民謡の踊りしか知らない。
ええい、どうにでもなれ!

「はーよいよい、あ、それそれ」
我を忘れて踊る。
初めて踊るのに、自分でも美しい形だと思う。
僕は民謡舞踏の才能があるのかもしれない。
だけど……。

風間さんは、あいかわらず渋い顔で僕の踊りを見ている。
眉間にしわを寄せて、身じろぎもしない。
そして、僕の踊りを食い入るように見つめている。
困った、なにか反応してくれないといつまでも踊りがやめられない。
その時、一瞬風間さんの目が光ったように思えた。

気のせいか?
「風間さん、僕の踊りを見て何か感じないんですか?」
僕はしびれを切らして聞いてみた。
風間さんから思いがけない返答が返ってきた。

「いいや、僕は感動しているんだよ。
本当に……。こんな、感動的な踊りがあったなんて。僕は、今まで地球でなにを見ていたんだ。美しい、非常に美しいよ! 坂上君!」
よかった、うまい具合に話がそれてくれたぞ。

「あ、あれ……。体がいうことをきかない!?」
風間さんは、にやりと笑った。
「実は、君の踊りがあんまりにも感動的だったんでね。ちょっと細工をさせてもらったんだよ」
細工って……、風間さんは僕の体に何をしたんだ!?

「君は、本当は地球人だったんだろう? 君が踊りを踊ったときから気づいていたんだ。スンバラリア星人は、踊りが踊れないんだよ。心配しないでいいからね。別に、君を責めたりしないよ。そのかわりスンバラリア星の博物館に寄贈するよ。
君のことをね」

「か、風間さん!! 体が、勝手に踊る! 止まらない!」
そして、風間さんはワッペンのような物を取り出すと片手をあげた。
一瞬、ワッペンが光った。
「うわっ!! ちょっと!!」

僕は、いつのまにかガラス張りのポットの中に入っていた。
相変わらず、僕は踊り続けている。
風間さんは笑っていった。

「僕は、そろそろ次のスンバラリアの同胞との交代期間に入るんだ。
よかったよいいみやげ物ができて」
そんな、僕はスンバラリア星の博物館で一生を終えるのか?

止まらない踊りを踊りながら、涙目でふと窓を見た。
空には、たくさんの星がまたたいて見えた。
あの星の中に、スンバラリア星があるのか……。


       (ドクロエンド)