学校であった怖い話
>七話目(岩下・福沢)
>AG5

そして、僕はゆっくり目を閉じた。
するとどうだ、僕のまぶたの裏にはスンバラリア星人として暮らしている自分の姿があったんだ。
これが、スンバラリア星人なのか……。
そこに映っている異星人が、僕だとわかったのはなぜだろう。

人間とは、まったく違った姿をしているのに。
なぜだかそう思えてならなかった。
……そこには、僕がスンバラリア星に生まれて成長するまでの過程がすべて映されていた。

この映像は最近の僕らしい。
僕には妻がいて、三人の子供がいた。
あっ、今度は僕の妻と子供が泣いている。
これは、僕が地球に派遣される前日のできごとらしい。

そして、僕は地球に到着する前に事故で記憶喪失になったのか。
「さあ、目を開けてごらん」
風間さんの声が響いた。

「うわっ! か、風間さん!? 化け物!!」
僕は、思わず大きな声を出していた。
そこには、風間さんではないアンモナイトのような頭を乗せた怪物が立っていたのだ。
「何を驚いているんだい? これは僕たちの本当の姿だろ?」

そいつはいった。
「嫌だねぇ、この人は。この姿は生まれたときからでしょうが」
僕はふと、窓ガラスに映った自分の姿を見た。
「…………………………うそだろ!?」

そこには、アンモナイトのような頭をした怪物が二体映っていた。
そして、僕は自分の頭を手探りで触ってみた。
頭はつるりとでかく、口元には触手のようなヒゲがわしゃわしゃと生えている。
これが僕の顔か……。

僕は、いったいどうなってしまったというんだ!?
「さあ、記憶も戻ったことだしさ。
君は、いったんスンバラリア星に帰ったほうがいいよ。
奥さんが心配しているからね。後のことは僕にまかせてくれ」
……スンバラリア星人は、僕に優しくいってくれた。

その時、キーンという耳鳴りが僕を襲った。
「…………………………思い出したぞ。僕は、スンバラリア星人だ。あの時、記憶を無くして困っていた僕は、地球人の体を乗っ取ったんだっけ。そして、いつのまにかその人間の思考と記憶が同化してしまっていたんだ。やっと思い出せたんだ!! 同志よ!!」

僕は、目の前にいるスンバラリア星人と固く抱き合った。
喜びの涙を流しながら。
「とりあえず、地球にある秘密基地まで送っていくよ。落ちついたら、早くスンバラリア星に戻るといい。
今日は語り明かそう。同志よ!」
スンバラリア星人は、ワッペンのような物を取り出すと、片手をあげた。

一瞬、空が光った。
外はもう暗かったので、昼間のように辺りが明るくなる。
その明かりはすぐに消えて、またもとの暗闇が戻ってきた。

そして、もうそこには二人のスンバラリア星人の姿はなかった。


       (新聞部エンド)