学校であった怖い話
>七話目(細田友晴)
>K2

「いいえ」
僕は思い切っていった。
細田さんがあんなことになったあとだから、本当は仮面の女のいうことに従ったほうがいいとは思ったが……。
しかし、こんなやつのいうことをはいはいと聞くわけにはいかない。

「……そう、わかった。わかったわ……」
仮面の女が呟くようにいった。
僕の返事を頭の中で繰り返し、自分の言葉と混ぜ合わせてかみしめているようだった。
仮面の女は続けていった。

「一緒に遊びましょう。ねえ、私と一緒に行きましょう」
さっきの、問いかけの時の厳しい口調ではなかった。
なにか、子供が両親に甘えているときのような口調だ。
気味の悪い声だったが、なんとなく気持ちがさっきよりは落ちついたかもしれない。
……その時。

「うわーーーーっ!」
突然、僕の体が宙に浮いたかと思うと、そのままものすごい勢いで天井にたたきつけられた。
まるで、引力が天井にあるようにまっ逆さまだった。

さっきのたたきつけられた衝撃で、背中を思いきり打ってしまったようだ。
そして、僕の真下で仮面の女が見上げていた。

僕は、その女が仮面の奥で笑っているのがわかった……。
「結局……お前も……口先……だけだ……な……」
仮面の女の声は、急に伸びたテープのようにトーンが低くなった。
「お前……、この六人の……地獄への……案内人……となれ……。やっと……私は救われ……る」

……?
救われる?
救われるってどういうこと?
この六人のってどういうことだ?
六人て、まさかこの話に集まってくれた人のことか?

みんなが死んだ?
……!?
みんなが消えたのは、死んだということ!?
まさか……。

「この……六人は……最初から……選ばれて……いた。……それも……また……運……命。さあ……、みんな……お前の……案内を……待っている……」
仮面の女はいった。
仮面の目の辺りにある、細い二本の線の奥で彼女の目が見えたような気がした。

「うわっ!?」
僕は次の瞬間、天井が水の波紋のように揺れているのを背中で感じた。
僕の体は、だんだん天井に沈んでいく。
もがけばもがくほど、僕は天井の下に下に。
彼女から見れば、僕は天井の上に上に……。

沈んでいった僕の体は、砂の粒子のようにサラサラと消えていくようだ。
そして、僕は意識しか残らなくなるのだろうか?
……意識さえも残らないのでは?
肉体がなくなると、僕はどうなってしまうのだろうか。

「心配……しない……で……大丈夫……」
仮面の女は僕に手を振っている。
僕の体はほとんどが天井に沈んでかろうじて顔だけがこの空間に残っている。
その僕の顔が、最後に天井に引き込まれるその瞬間……。

はっきりと僕は見た。
仮面の女が、その仮面を取って僕を見上げていた。
天使のような輝く顔をして……。


       (ドクロエンド)