学校であった怖い話
>七話目(細田友晴)
>2E2

「君はひどいよ、だからってその子供を死に追いやるなんて、最低だ!」
僕は、腹が立って叫んだ。
……そう、あなたもやっぱり私のことをそんなふうにいうのね。
誰も私の悔しさなんか、わかってくれないのよ。

私が死んで悲しんだのは、お父さんとお母さんだけだった。
この世に強く想いを残して死んだ私は、こうやってここにいる。
私の心が具現化した、実際はありえない存在……。
でもいいわ。
いいのよ!

もう、六人が死んでしまったんだから。
私は救われるのよ!!
彼女は再び、仮面に手を添えた。
今度は、ためらうことなくその仮面を取り去った。
彼女の仮面の奥には……………………。

とても、言葉ではいいあらわせないほどの美しい顔があった。
透き通るような白い肌と薄桃色のほほ。
そして、僕の目をまっすぐ見据える黒目がちな瞳……。

彼女が満ち足りた気持ちになるとこんな顔になるのかもしれない。
僕は、あまりの美しさに呆然としていた。
……その時。
彼女の顔に変化が現れた。

美しかった顔は、ロウが流れ落ちるように崩れていく。
その溶けだした顔の奥には、もう一つの顔があった。
その顔は、どす黒いトカゲのような皮膚をしている。
そして、大きくて丸い赤い瞳がこちらを見ている。

「まだ……、救われない……のか。……まだ……足りない……のか」
彼女の声は、伸びたテープのような低くくぐもったものに変わっていた。
彼女がしゃべってわかったことだが、その顔には額からあごにかけてぱっくりと開く大きな口が開いていた。

その口には、鋭い牙を備えている。
「おまえも……私が……救われるための……かてに……なれ!」
彼女はそういうと僕に襲いかかった。

彼女の顔の縦割れの口は、大きく左右に開き僕の頭をすっぽりとはさんだ。
僕は、彼女の牙を深く頭に受けている。
熱い血が僕の顔をつたう。
彼女は知らない。
……わかっていない。

どんなに恨んでいても、その仕返しをしたところで、なんにもならないということを。
自分の気持ちはおさまるかもしれないが、救われるわけがない。
まして、そんなことをして成仏などできるわけがない。
そして彼女は、自分の欲望のためにこれからも同じことを繰り返すだろう。

永遠に救われることはなく……。
僕は、彼女の叶わぬ欲望のために死ぬ。


       (ドクロエンド)