学校であった怖い話
>四話目(岩下明美)
>A12

なにするのよ。
……やめてちょうだいよ。

うふふふふ……。
あんた、動いたわね?
私との約束を覚えてる?
私の話が終わるまで、動かないでって言ったでしょ?
私の話は、まだ終わっていないわ。

それなのに、あんたは約束を破ってしまった。
私はね、約束を破られるのが大嫌いなのよ。
そして、桜の精霊もね。
あんたが、約束を破ってくれたから私は自由になれた。
だから、教えてあげる。

……実を言うとね、生けにえになる生徒は、毎年必ず夢を見るのよ。
広岡さんと折原さんの夢をね。
そして、桜の木の伝説を知るの。
自分が生けにえになることもね。
夢を見ると、一週間以内に、呼び出されるそうよ。

二人に誘われるようにして、自分が寝ている間に首を吊れるんですって。
そう、今年、夢を見たのが私なの。
だから、私は知ってるのよ。
桜の木の伝説を。
そして、その夢の中でいろいろと教えてもらったの。

自分が助かる方法が、たった一つだけあるって。
それは、他人を身代わりにすることなの。
誰でもいいから、夢で見た桜の木の話をしてあげるの。
その時に、最後まできちんと話を聞くことと、自分のいる場所を動かないことを相手に約束させるの。

それで、相手がその約束を破ったら、その人が自分の身代わりになってくれるのよ。
……ごめんなさいね、坂上君。
あなたを騙したみたいで。
でも、仕方ないわ。
私、まだまだ生きたいから。
人生を楽しみたいから。

そのためだったら、どんなことでもするわ。
坂上君、あなたも、もうすぐ夢を見るわ。
桜の木の夢をね。
その時、ちゃんと夢を見たことを覚えておきなさい。
そして、一週間以内に、誰かに話すのよ。

そうすれば、今度はあなたの代わりにその人が身代わりになってくれるから。
もし、あなたが死んでしまったら、私は悲しんであげる。
……でも、無理な話ね。
あなたが死んでしまったら、誰もあなたの存在を知らなくなるんですもの。

あなたの存在自体が、この世から消えてしまうんですものね。
悲しんであげようにも、あげられないわね。
……頑張ってね、坂上君。
私のこと、恨まないでね。
これも運命だと思って……。

……さあ、これで私の話は終わり。
それじゃあ、新聞部の部室へ戻りましょうよ。
まだ、七不思議は終わっていないんだから……。


       (五話目に続く)