学校であった怖い話
>四話目(岩下明美)
>M5

もう、話を聞かなくてもいいってことなのかしら?
そう……。
でもね、あなたは最初、私の話が終わるまで動かないって、約束してくれたわよね。
私がここで話をやめてしまったら、あなたはずっとここから動けないのよ。

あなたは、そうやって笑っているけど……。
ふふふ。
いいことを教えてあげるわ。

ある日、私は夢を見たのよ。
桜の花が暗闇に咲いていて、声だけが聞こえてきたわ。

「お前は、この桜の生けにえに選ばれた。喜ぶべきことだ。しかし、お前がどうしてもそれを拒むなら、逃れる方法を一つだけ教えよう。まず、誰かと二つの約束をするのだ。一つは、その場所を動かないこと。

もう一つは、絶対に話を中断しないで、最後まで聞くこと。その二つの約束を交わしてから、これから話す話をあの桜の下で、そいつに話せ。もし、そいつがその約束を破ったり、途中で話を聞きたくないといい出したら、その場でお前の身代わりになってくれる。いいな……」

と……。
そして、もちろんあなたが約束を守ったら、私は助からないってことも……。
ふふふ、逃げようたってムダよ。
もう、あなたの体の自由はきかないわ。

ほら、見てごらん……桜の根が、もうあなたの足元をがっちりとつかんで離さないでしょう?
ムダなあがきは、やめなさい。
運が悪かったわね。
はっきりいって、身代わりは誰でもよかったの。

かわいそうなあなたを、私が哀れんであげる。
そして、ありがとうをいうわ。
大丈夫よ、心配しないで。
あなたが死んでしまったら、誰もあなたの存在を知らなくなるんですもの。

あなたの存在自体が、消えてなくなるのだから……。
……だんだん眠くなってきたのね。
そして、意識が遠くなっていくのがわかるでしょう?
もう、さよならね。
あなたのことは、忘れないわ。

あら失礼、これはちょっと無理な話ね……。
ふふふ。


そしてすべてが終った
              完