学校であった怖い話
>七話目(風間・岩下)
>L9

「嘘じゃない! あれは嘘でいったんじゃない」
僕は、叫ぶようにいっていた。
元木さんは、大粒の涙をぽろぽろこぼしていた。
僕は反省していた。
結婚するとかしないとか以前の問題だ。

元木さんは変わっているけど、彼女もやっぱり普通の女の子だったんだと……。
そう思ったら、彼女がいとしく見えて仕方なかった。
「ごめん、さっきはあんなこといってしまって。でも、この状況についあんなことをいってしまった。ごめん。
さっきの約束はまだ有効かな?」

僕は、ちょっと自分でもびっくりするほどキザなセリフを吐いていた。
これは、ちゃんと本心からだ。
元木さんは、涙を拭くと僕に笑いかけた。
しかし、彼女の笑いはだんだん消えていった。
「口では、なんとでもいえるわ。あのとき、あなたが本心でいっていないって知っていたのよ。よくも、私の

気持ちを踏みにじってくれたわね」

彼女はそういうと、ドアを勢いよく開けた。
……そこには、一人の男が立っていた。
多分、彼が神田さんなのだろう。
多分というのは、僕が神田さんを知らなかったという意味があるが、それ以前に彼は首から上がなかったからだ。

首を持たない学生服の男が、そこに立っていた。
突然の出来事に、みんなは言葉を失っている。
元木さんがいう。
「今おばあちゃんがいったわ。この中の誰か一人を彼の生けにえとして差し出せば、ほかのみんなは、助かることができるって」

みんなはざわめいた。
「でも、みんな心配しないで。私が決めるわ……。ね、坂上君あなたなんてどうかな。ふふふ」
ぼ、僕がなんで!?
神田さんとは、一番関係がない人間じゃないか。

なぜだ!
やっぱり彼女は、さっきのことを根に持っているのか。
そして、神田さんだと思われるその男は、ロボットのような動きで歩き出した。

頭がないのに、僕の方に向かって歩いてくる。
逃げなければ!
か、体が動かない!?
……僕の体をみんなが捕まえている。
僕の足や手や頭をがっしりと。

「お前が、犠牲になるのが一番いいんだ。神田に関係ない者が、犠牲になるのがあとくされなくていいと思う。すまないとは思うが、ここはひとつよろしく」
ちょっと、それはないんじゃないか!
僕は思いきり叫んだ。
「元木さん!!」

僕は確かに見た。
元木さんを取り囲んで揺らめいている、彼女の体に住んでいるという霊たちを……。


       (ドクロエンド)