学校であった怖い話
>隠しシナリオ2(田口真由美)
>Z2

不思議な人だと思うの。
なんかさ、どんなことがあっても動じないって感じ。
……いや、動じるのかもしれないけど。
立ち直りが早いっていうか。
死んでも生き返りそうっていうか。

そうそう、坂上先輩がするこっくりさんは、五百円玉を使うみたいよ。
それだと、本物の高級霊のこっくりさんが呼べるんですって。
ちょっと、やってもらおうかしら。
五百円玉、もっていこうっと。

さあ、新聞部に着いたわ。
「先輩!!」
五百円玉を出してっと。
「先輩、すごいこっくりさんができるそうですね。
ぜひ、この場でやってもらえませんか?」
「………」
坂上先輩、黙り込んじゃった。

なんか、ニヤニヤしてるわ。
「わかった。後でやってあげる。この五百円玉はあずかっておくよ」
あっ、先輩ったら五百円玉をポケットに入れちゃった。
……後輩からお金をまきあげるなんて。
ひどい人。

後で先生にいいつけてやる。
「あれ、何むくれてるの?」
坂上先輩、私の顔色うかがってる……。
なだめようとしてもダメ。
絶対に、許さないんだから。
「ほら、いいものをみせてあげるよ」
……いいもの?

「これ、一昨年に僕が撮った写真なんだけど……」
あ……。
「きれーい」
「そうだろ。……ほら、これはどう?」

「うわあ。先輩、この写真は?」
「旧校舎にあった鏡さ。それから悪魔」
「……な、なんでそんな写真を持ってるんですか?」
「これ、二年前の校内新聞に載せようとしたんだよ」

「合成写真ですか?」
……坂上先輩、ニヤニヤしてる。
なんだか変だなあ。
「ほら、こんな写真もあるんだよ」

「きゃはは。おかしーい」
「まだいろいろあるんだよ。ほら」

「これ、全部先輩が撮ったんですか?」
「うん、あの時はいろいろあったよ」

「これは、旧校舎の階段。
知ってる? 旧校舎は、二年前に取り壊されたんだけど。
さまざまな霊現象があったんだよ。
この階段にも、いろんな怖い話があってね……。
懐かしいなあ。十三階段……」
先輩、ぶつぶついってる。

「これも、旧校舎ですか?」
「そうだよ。ぼろぼろでひどいだろう……」
ほんとだね。
壁も床も崩れそう。
「今、第二体育館を建設してるだろ? 

あれは、旧校舎を取り壊した後に建ててるんだよ。
で、それを記念して、学校の七不思議を特集したいんだけど」
「……はあ。
先輩、こっちの写真も見ていいですか?」

……ああ、いいよ。
写真は、自由に見て。
ところで、知ってる?
旧校舎を壊した時は、たくさんの白骨が出てきたそうだよ。
もちろん、人間のだ。

それで、あの下には防空壕があったとか、戦死者の死体がたくさん埋まっていたとか……。
いろんな噂がたってたな。
それから、こんな話もある。
旧校舎の取り壊し中は、事故がたくさん起きてしまってね。

白骨死体の呪いだとかいって、かなり大がかりなお祓いをしたんだよ。
その頃僕は、学校の七不思議について、記事を書くことになっていてさ。

当時、僕の先輩の日野さんという人に、学校の七不思議に詳しい人達を集めてもらったんだよ。

いろいろ話を聞くうちに、僕もこの学校にまつわる怖い話をたくさん知った。
けど、その企画は結局『旧校舎から出てきた大量の白骨死体の謎!』というものに変わってしまったんだ。
まあ、仕方ないよね。

単なる噂話よりも、現実に起こった出来事のほうがインパクト強いしね。
君も覚えてるんじゃないか?
あの事件は、警察も来たし、新聞にも載ったからね。
その時の校内新聞の記事は、僕が担当したんだけどさ。
すごく評判がよかったよ。

けど、僕は残念でね。
あの企画はボツになってしまったからね。
もともとは、僕の企画じゃないのにさ。
部長の考えた企画なのにね。
なぜか、すごく残念だった。

不思議なもんさ。
僕は、あの企画を押しつけられたとき、すごくいやな気持ちだった。
できることなら、やりたくなかったんだ。
それほど、怖い話が嫌いだったわけさ。
なのに、今はどうだ。

自分から進んでやりたくて、たまらなくなっている。
それで、僕は考えたんだよ。
あの旧校舎の跡地に第二体育館が建った時、今度こそ、この企画を実現させようとね。
そこで、どうだろう?
君にその大役を任せたいんだ。

どうかな?
やってくれるかい?
1.やります
2.できません