学校であった怖い話
>隠しシナリオ1(坂上修一)
>J3

違う。
絶対に、そんなことを思ってはいない。
僕は彼らを睨みつけた。
「みんなが消えるなんて、予想できなかったんだ。わかっていたら、途中でやめた!」
その瞬間、みんなの顔から笑いが消えた。

「まだ、そんなことをいっているの」
吐き捨てるような、岩下さんの言葉。
「がっかりしたわ。あなたを買いかぶっていたようね」

新堂さんが肩をすくめる。
「まったくだ。やっぱり、俺達の仲間になるのは無理だな」
「何だか白けたよ。帰ろう」
「そうね」
みんなは、僕に背を向けた。
「あ、ちょ……ちょっと!」
風間さんが振り向いた。

「坂上君、君は失格だ。僕達とともに来る権利はないよ。夢から覚めるがいいさ」
夢……だって?
ずっと続いていた悪夢から、逃げ出すことができるのか?
僕は、期待の表情を浮かべたかもしれない。
風間さんは、そんな僕を見て、さも軽蔑したように眉を上げた。

「……愚かな」
「えっ?」
今なんて……?

聞き返そうとした時には、六人の姿は消えていた。
そして気づいた。
いつの間にか僕は、真っ暗な空間の中に浮かんでいたのだ。
なんだこれは!?
僕は自分の部屋にいたはずなのに。

見渡す限り、何もない。
光も飲み込んでしまいそうな、絶対的な闇。
ここはどこなんだ?
僕はなぜ、こんな所に!?
「誰か……っ」
叫んでみて、ゾッとした。

無限の空間に、声が吸い取られるような感じがしたのだ。
「ふふふ……何を騒いでいるの」
頭の中に、女の声がした。
「私達のところへは来ないと……夢から覚めたいと望んだのは、あなたでしょ……」
そんな!
これが現実だというのか。
何もない、どこまでも続く暗黒。

七不思議の企画どころか、学校も僕の部屋も夢の産物だったということか?
いや、それどころか……。
「そうよ。あなたは坂上修一という名前じゃない。そんな人間なんて、初めからいやしなかったのよ……」

頭の中に響く声が、冷静に、残酷に事実を告げる。
そうか……思い出した。
これは、仮面の少女の声。
「あなたは望み通り、夢から覚めたの。その無限の現実の中で、永遠にさまようのね」

「ま……」
待ってくれ、といおうとした。
でも、声が出ない。
押しつぶされそうな重い現実に、これからどう立ち向かえというんだ。
……もう答えは返ってこなかった。

僕は、闇の中心に向かって、ゆっくりと堕ち始めた。
僕にはわかった。
もう二度と、夢を見ることはないのだと。


       (ドクロエンド)