晦−つきこもり
>一話目(真田泰明)
>O3

そうか、そうだよな。
俺もこのことを経験するまで、頭の中では知ってても実感として思ったことはなかった。
だから俺も、ただ答えを知りたいという気持ちだけで屋上に向かったんだ。
屋上に行くと風間は遠くの景色を見つめている。

何か固く決意しているような表情だった。
俺は彼の話を聞く決意が挫けかけた。
(あの顔からするといい話ではないな…………)
しかし、彼の表情を見ていたら、もう逃げることはできないという気分になってきたんだ。

そう思うと何か投げやりになってきた。
俺は足を進めた。
普通に会話できる距離まで来ると、風間は振り向いた。
そして、床を見つめ言葉を絞りだそうとしている。
彼は口を開いた。

「す、す、す、す…………」
そして、恐怖の瞬間だ。
「好きです!」
「…………………………………… ……………」
俺は恐怖のあまり、鳥肌がたった。
彼は一歩一歩近づいて来る。
言葉が出なかった。

そして俺は体じゅうの筋肉を奮い立たせ走ったんだ。
「うわーーーーーーー」
俺の悲鳴は体じゅうに司令を発した。
彼は俺のことを好きだったんだ。

「泰明さ〜ん」
彼は俺の方へ走ってきた。
俺は必死に逃げたんだ。
今まで生きてきた中で、あんなに恐ろしい目にあったのは初めてだった。
それで彼は、俺の写真をコンピューターに表示していたんだよ。

えっ、怖くない。
葉子ちゃん、男に追いかけられたことがないから、そんなこというんだよ。
ああ、葉子ちゃんなら女の子にってことだけどさ。
怪物に追いかけられた方が、どんなにましか…………………。

おい、哲夫までそんな怖い顔することないだろ。
……………ごめん!
まあ、最初だしな。
こんなところで、次は誰の番だ?
は、ははっ。


       (二話目に続く)