晦−つきこもり
>一話目(前田和子)
>A1

あら、最初は私なの?
なんだか緊張するわね。
怖い話なんて久しぶりよ。
それにしても……よりによって、この部屋を選ぶなんて。
ここは出るっていったでしょ。
どうしてか分からないけれど、この部屋にお客様を招くと、みんなすごく寒がるのよ。

ストーブで暖めても、どこからか隙間風が入ってくるのよね。
ほら……今日だって。
あんたたち、わからない?
冷たい空気がゆうるりと流れてくる感じ。
この客間、みんなが気味悪がるのよ。
部屋って、使われなくなるといつのまにか虫がわいたりするでしょ。

ここはきちんと掃除しているんだけど、人が使わないから空気がどんどん淀んでくる感じがするの。
気のせいかしらねえ。
ここで平気な顔して遊んでいた子もいるし。
ふふ……葉子ちゃんのことよ。

ねえ葉子ちゃん、この客間、好きだったわよね?
縁日で折り紙を買ってあげたら、夢中になって折っていたでしょ。
……みんな、知ってる?
折り紙って、実は不思議な力があるんだってこと。

あれは、ただの四角い紙きれよね。
でも、あれ一枚で、いろいろなものが作れるでしょ。
何であんなにいろんな折り方があるのかわかる?
1.わかる
2.わからない