晦−つきこもり
>一話目(前田和子)
>J8

ふふ……。
捜すっていったのは……葉子ちゃん?
石を見たいのね。
そう……。
じゃあ、捜してちょうだい。
位牌は倒さないようにね。
ホラ、その引き出しの中。
そのへんがあやしいわよ。

気を付けて。
石を粗末に扱うと、呪われるらしいから。
大丈夫。
丁寧に扱えば呪われないわよ。
私だって、時々取り出して見ているもの。
時々洗ってやるの。
石がそれを望んでいる気がするからね。

葉子ちゃん、石を出したら、そこにあるお線香を一本つけて。
みんなに手をあわせてもらいたいから。
そう、それよ。
細長い石でしょ。
じゃあ、お線香をつけて。
ほらほら、手をあわせて。

……さあ、葉子ちゃん。
その石は仏壇にもどしてね。
そう、丁寧に。
じゃあ、次の話を聞きましょうか。

でも気を付けて。
この部屋は本当に出るんだから。
どこからやってくるのかしらないけれど、確かに何かがいるようだからね。
さあ、次は、誰が話すの……?


       (二話目に続く)