晦−つきこもり
＞一話目（山崎哲夫）
＞O2

「はあ、ショッピング……。一体何を買っているんだい？　……まあ、おじさんには関係ないことだけどな。でも、体を動かした方がいいぞ。若いんだから。そうだ、山登りなんか、どうだい？　別に高い山じゃなくてもいいから、登ってみるといい。山はいいぞぉ。

空気はおいしいし、頂上まで登ったときの気分は最高だ。うーん、話していると、また山に登りたくなっちまったなぁ。どうだい、葉子ちゃん、明日あたり。ちょうどここの裏には、手ごろな山があるじゃないか……」

あ〜あ、またはじまった。
哲夫おじさんの悪い癖。
自分の考えを押しつけて、勝手に計画をたててしまうんですもの。
人の都合ってものを考えないのかしら。

「それより、葉子ちゃん。山はな、この手の話にことかかないって知っていたかい？　今からする話は、そんな山で起こった話なんだ」
そういって、哲夫おじさんは、真剣な顔で、話し始めました。

これはな、ある大学生グループが山に登ったときの話だ。
自分らの中じゃ、結構有名な話なんだがな。
そのグループは、大学の山岳部の連中で、夏休みを利用して山に登っていたんだ。
男三人、女二人の、五人組のグループだった。

その日は、とても天気がいい日で、絶好の登山日和だったんだ。
彼らは、とても気分がよかったと思うよ。
青い空、澄んだ空気、どこまでも続く白い峰々。
流れる雲に思いを寄せて、我が目指すは遥かなる頂……。

どうだい、葉子ちゃん、山っていいだろう？
１．山っていいわ
２．私には興味がないわ