晦−つきこもり
>一話目(鈴木由香里)
>B9

馬鹿なこといわないでよ!
そんなことしてたら、今頃、私はどうなってたかわかんないじゃん。
私は、倉庫にも、売り場にも戻らずに、そのまま家へ帰ったの。
確かに、松尾さんのことは気になるけど、自分が一番大事。
彼女のために、わざわざ危険に飛び込むようなまねはしないって。

私の行動は、すべて私のためだからね。
彼女、ずーっと行方不明のままよ。
彼女は、きっと気に入られたのよ。

今も、あのデパートのどこかにいるんじゃん?
あの倉庫が、一番怪しいんだけどさ。
葉子も好かれるタイプに見えるなぁ。
気を付けなよ。
そうだな、もし彼女が葉子だったら、ちゃーんと捜しに行って助けてやるよ。

心配しないで。
私たち、他人じゃないんだからさぁ。
だから、松尾さんのように行方不明にならなくてすむよ。
嬉しい?
……さ、私の話はこれで終わり。
次は誰…………?


       (二話目に続く)