晦−つきこもり
>二話目(真田泰明)
>O7

いや、ちょっと違うんだ。
もしそうなら、この事件はもっとスッキリしたかもしれない。
人が自殺して、スッキリするというのも変だけどさ。
実は坂田が行方不明になったんだ。
それも罪を逃れるために、逃げたんじゃないんだよ。

警察は彼の行方を探した。
しかし警察が見つけたのは、死後一週間たった彼の遺体だった。
片桐が坂田を毒殺しようとするシーンを撮った、ホテルの一室で見つかったんだよ。
確かに、あのとき坂田が死んでいれば、ちょうど一週間たっている。
わけがわからなかった。

だってそうだろ。
彼はさっきまで、別の部屋で演技をしていたんだ。
それにあの部屋は撮影終了後、ホテルの従業員が掃除をしている。
彼らはそのとき何もなかったと、証言しているんだ。

警察はスタッフを疑い取り調べたが、結局、事件の真相にせまることはできなかった。
まあ、警察もホテルと撮影スタッフがぐるになって、二人の役者を殺したなんて本気で考えていたわけじゃあないだろうけどね。
今でもわからないよ。
いったいあのときの出来事がなんだったのか。

まあ、あまり深入りしないほうが身のためってこともあるからな。
俺の話はこれで終わりだ。
じゃあ、次の人の番だな。


       (三話目に続く)