晦−つきこもり
>二話目(前田和子)
>B6

そうなると、生きる欲がでてくるのが人間よ。
秋山君は、田崎君に思い切りすがりついたの。
「やめ……ぐがっ……!」
田崎君は、秋山君にしがみつかれて溺れそうになったわよ。
このままでは死んでしまう。

そう思って、秋山君をどうにかふり払おうとしたの。
でも、秋山君は田崎君をなかなか離さなかったの。
「よく……も……!」
もう、田崎君は普通でいられなかったの。
秋山君を殺さなければ、自分も死ぬ。

そう思うしかなかったのよ。
田崎君は、秋山君の首に手を回すと、思い切り絞めたのよね。
「ぐが……っ!」
こうして、お互い不利になることをしたのよ。
これじゃあ二人とも助からないわよね。

翌日、二人の死体が発見されることになったんだけど。
……嫌よねえ。
だって、この二人って仲がよかったわけでしょ。
でも、仲がいいからってずっとそうとは限らないのよね。
私、この話を聞いた頃、良夫の友達にしばらく気を付けていたの。

変な子はいないかしらってね。
それに……ヒナキちゃんって、何者なのかしら。
あんたたち、興味本位で見に行っちゃ駄目よ。
空き地みたいな私有地を探したら駄目。
本当に、ヒナキちゃんに会えるかどうかはわからない。

でも、もし会えたら……。
何が起こるかわからないのよ。
……じゃあ、次の話を聞こうか。
次は誰の番……?


       (三話目に続く)