晦−つきこもり
>二話目(前田和子)
>G6

でも、秋山君にはどうすることもできなかったの。
「助けて!」
声は相変わらず聞こえていたけど、気のせいだと思おうとしたのよ。
体がだるくて仕方がなくてね。
秋山君は、眠りに落ちたの……。

翌日、秋山君は血だらけになって発見されたわ。
何か、小さい生き物に食いちぎられた跡のようなものを、いくつも体につけていたそうよ。
……貝ね。
貝の中に取り込まれた田崎君が、秋山君を起こそうとして何度も食いちぎったのよ。

この時のことって、ずいぶんニュースで流れたんだから。
謎の犯行! 男子中学生にケガを負わせたのは?
なんて見出しでね。
結局、犯人はわからなかったそうだけど。
私は知ってるの。

ヒナキちゃんが渡した、貝が原因だってね。
子供の霊や田崎君の霊が、なぜ貝に入っていたかってとこまではわからないけど。
秋山君の家では、密かにお祓いをしたそうよ。
秋山君は、ヒナキちゃんのせいだっていっていたけど、信じたのは家族だけ。

まあ、私も信じるけれどね。
世の中、いろんなことがあるもんよ。
一見、ありえないようなことも起こるのよ。
だから気をつけなくちゃいけないわ。
ほら……今日だって。

こんな話をしていたら、どこかの霊が興味を示して近付いてくるかもしれないのよ。
嫌ね、なんだかゾクゾクするわ。
さあ、次は、誰が話す……?


       (三話目に続く)