晦−つきこもり
>二話目(前田和子)
>H8

……秋山君は、小さなお墓を掘り起こしたの。
すると中から、小さな子供が飛び出してきたのよ。
「うわああーーーっ!!」
「あっははは……! だまされた!!」
ヒナキちゃんは、本当に嬉しそうに笑ったの。

誰もが見とれてしまいそうな笑顔でね。
「みんな嫌いよ。興味本位で、私を見物しにくる人はみんな嫌い」
お墓の中から、土でドロドロになった田崎君の屍が飛び出してきたわ。

「や、やめ……!」
「自分だけ助かろうなんて、駄目よ。ほら、田崎君が怒っているわ。あなた、ウソでもいいからそんなことはできないっていえばよかったのに」
田崎君と子供は、もがく秋山君をがっしりつかまえると、ゆっくりと歩いていったの。
私有地の外にね。

「これであの子も成仏するかしら」
ヒナキちゃんは、ニヤニヤ笑いながら呟いたの。
……で、その次の日なんだけど。
海で死んだ子供の家の玄関に、三人の死体が転がっていたのよ。

もう、すごいニュースだったんだから。
三人はなぜ死んだのか、誰かに殺されたのか。
それとも、子供を田崎君と秋山君が殺したのか……とかね。

本当にすごかったわよ。
でも、真相は結局わからなかったの。

ある雑誌に、投書が届いていたけどね。
それが今の話。
ヒナキちゃんが投書したのかしらね。
変な文章だったわよ。
「私は貝の叫びを聞いたの。しばらく一緒にいたけど、邪魔だから成仏させようと思ったの」

なんて感じの。
でも……嫌よねえ。
自分が住んでいる所で、謎の死人なんか出たら。
いい? あんたたち。
この村には、ヒナキちゃんっていう女の子がいるの。
多分、本当にいるのよ。

その証拠に、謎の死人は他にも出ているんだから。
みんな、口を揃えていうわ。
謎の死は、ヒナキちゃんのせいだってね。
私有地にいる、不思議な女の子。
正体は何なのかしら。

……だから、注意して。
この村に来ている時は。
青いセーラー服には、注意するのよ……。
じゃあ、そろそろ次の人、話してよ。
次は、誰の番?


       (三話目に続く)