晦−つきこもり
>二話目(山崎哲夫)
>N10

「………………………………」
だから、何だっていうの?
何も起きないじゃない。
………………………………。
………………………………。
………………………………。

「……哲夫おじさん?
もう、電気つけていいの?」
「……ああ、いいよ」
(もう、なんにもないじゃない!
……当たり前だけどね)

「あれ? みんなどこ?」
私以外、誰もいなくなってしまったわ。
「哲夫おじさん……?」
返事がない……。
「よ、良夫! どこにいるの?
返事なさい!!」
………………………………。

(いやだわ、気持ち悪い……。みんなで、私をからかっているんだわ。きっと、どこかに隠れているのよ!!
そうだ! 廊下よ。みんな廊下に隠れているんだわ)

思った通り。
廊下にみんな隠れてたわ。
「なんだ、面白くないなぁ。葉子ちゃん、怖がらないんだもんな……」
哲夫おじさんは、残念そう。
そんな単純なことにひっかかってたまるものですか。

「でも、変ね。哲夫おじさん、ずっと外にいたんですよねぇ?」
「そうだけど、どうかしたか?」
「うん、哲夫おじさんの声が部屋の中から、聞こえたみたいだったから……」
「え? 自分は、何もいってないぞ……」

哲夫おじさんったら、私を脅かそうとして……。
「またまたぁ〜。電気つけていいって聞いたら、いいよっていったじゃない」
「いや、いわなかったけどな……」

(……え? じゃあ、さっき返事をしたのは、誰だったの?
確かに、哲夫おじさんの声だったみたいだけど……。そういえば、この部屋、出るっていってたっけ……)
私はその時、背中に冷たい汗が流れるのを感じたの。

「さあ、これで、自分の話は終わりだ。せっかく、葉子ちゃんを脅かしてやろうと、みんなと打ち合わせしておいたのに、失敗しちゃったなぁ。葉子ちゃんも、もう子供じゃないんだな。がっはっはっはっはっはっは」
「………………………………」


       (三話目に続く)