晦−つきこもり
>二話目(鈴木由香里)
>G9

甘い! 甘いよ。
あの母子を背後から操る影が、私には、はっきり見えるって、いったじゃん。
黒っぽくて毛むくじゃらの影が、真っ赤な目をぎらつかせながら、二人の背後から睨んでるんだよ。

辺りには、こう……生暖かくて生臭いにおいが漂っててさぁ。
ああいう状態を、憑かれてるっていうんじゃん?
憑依霊っていうのかなぁ。
動物霊とか、浮遊霊っていう、ごく低級なものって感じだけどさ。

放っておいても大丈夫だよ。
どうせ、よその家の事情だもん。
あまり人様の事情に、首を突っ込むのは良くないからね。
あんな家の一つや二つ、滅びたっていいじゃん。

私には、全然、関係ないこと。
さ、これで話は終わりだよ。
次へ行こうか。


       (三話目に続く)