晦−つきこもり
>二話目(藤村正美)
>I8

……信じない、というんですのね。
まあ、驚いた。
私が嘘をついたというんですのね。
何を根拠に、そんなことをいうのかしら?
私は見ての通り、真っ正直で嘘のつけない人間ですわよ。

疑われるなんて、思ってもみませんでしたわ。
ひどい人ですわね。
私がどんなに傷ついたか、想像もできないのでしょう。
あなたたちは、そういう人ですわよね。
がさつで、鈍感で、意地が悪くて。
あきれましたわ。

こんな人たちと血が繋がっているなんて、非常に不愉快です。
私のような神経の細い人間には、つき合い切れませんわ。
正美おばさんは、一気にまくしたてると、黙り込んでしまった。
みんな、シーンと静まり返った。

こんなおばさん、初めて見たわ……。
私は、呆然としてしまった。
「ま、まあ、話を続けようか」
泰明さんが、空気をなごませるようにいい出した。
そうだわ。
この気まずい雰囲気を救うためにも、話を続けなくちゃ。

正美おばさんが、もう話す気がないのは、一目瞭然だわ。
私は、次に話す人を選ぶことにした。


       (三話目に続く)