晦−つきこもり
>二話目(前田良夫)
>O6

おいおい、マジ?
俺がそんな風に見えるわけ?
葉子ネエ、いい加減なこというなよな。
俺は大丈夫だよ。
あれ以来、勝手に体が動くこともなくなったし。
だから、安心して……。

あ、あれっ?
なんだ、これ。
手が……俺の手が、勝手に動く!
何かに引っ張られてるみたいだ。
誰か、俺を止めてくれ!
早く!!

俺の手が!!
そう叫んで、良夫はいきなり飛びかかってきた。
「きゃあっ!」
飛びつかれて、ひっくり返った私の首を、両手で絞めてくる!
「誰か助けて!」
良夫が、泣きそうな顔で悲鳴をあげている。

だけど手の力は緩まない。
私は声も出せずに、じたばたと暴れた。
泰明さんたちが、あわてて良夫を引き離そうとしている。
でも、良夫の手は吸い付いたように離れない。
こんなの、小学生の力じゃないわ。

目の前が赤く染まってきた……。
もう駄目。
こんなことが、私の身に起こるなんて……。
みんなの声が遠くなる。
そして、闇の中に吸い込まれるように、意識が途切れた。


すべては闇の中に…
              終