晦−つきこもり
>二話目(前田良夫)
>P6

そうだよな。
笑っちゃうだろ。
でも、せっかくのチャンスを逃すことはないよな。
大事にしてくれるのをいいことに、家に帰りたいっていったわけ。
うん、アッサリ帰してくれたぜ。

そんな顔すんなよな。
怖かったんだからさ。
あと一日だって、あんな場所にいたくなかったんだ。
だから俺、林間学校の思い出って、ないんだよな。
まあ、あれ以上いたら、どんな目にあったかわかんないしさ。

あんな思い出だったら、もういらないって感じ?
……えっ、それから?
うん、あれ以来、体が勝手に動いたりしなくなったぜ。
ほこらの中に、何がいたのかはわからないけど、あの湖から離れられないんじゃないのかな。

だとしたら、あれはまだ、あそこにいるってことだけど……。
俺の話は、これで終わりだぜ。
次は、誰に話してもらう?


       (三話目に続く)