晦−つきこもり
>三話目(真田泰明)
>N11

ははっ、ありがとう。
俺はそのときジンときてさ。
「武井、ありがとう……。でも、もうやめろ。これからは自分のために生きるんだ。俺のことはもういいから……」
今度は、俺が彼女のために、何かする番だと思ったんだ。
しかし彼女は少し哀しそうな顔をする。

「でも、もう私だめなの……」
そういうとうつむいた。
そして、スッと立ち上がると庭に出たんだ。
俺も後に続いた。
「石に願ったの……、私はどうなってもいいから……、真田君をって」
彼女がそういい終わると、石から耳鳴りの様な音が流れた。

「真田君、さようなら……」
そして彼女は風化するように、風に流されて消えていった。
俺は彼女がいた場所に行き、膝を突き泣いたんだ……。
これで俺の話は終わりだ。

これが俺の石にまつわる話。
その後、俺の石と彼女の石が一つになった。
ほらこれがその石さ。
二つに分かれていたと思えないほど、きれいにつながっているだろう。
いったいこの石はなんなんだろうな。

彼女の形見のつもりで持っているんだけどさ。
また、哀しいできごとが起きなければと思うよ。


       (四話目に続く)