晦−つきこもり
>三話目(真田泰明)
>R10

そうか、俺は戸惑った。
そしてもう一度、ノブをとったんだ。
するとドアが開いたのさ。
さっきは確かに鍵がかかってたのに……。
中はシーンと静まり返っている。
誰も居ないようだ。

鍵が壊れたっていうんじゃなくて……。
誰かが鍵を開けた、そんな感じだった。
家の中は、シーンと静まり返り人の気配はなかった。
不法侵入だな……。

俺の頭にはそんな現実的な考えが浮かんだが、それを実感として受け取ることはできなかった。
このモラルの欠けた行動に、何の抵抗も感じなかったのさ。
そしてさらに奥へと、俺は足を進めたんだ。
静まりかえった家の中は、時折、寒気すら感じる。

この異常な雰囲気が、俺の気のせいなのか、それとも本当に何かがいるのか、まったくわからなかった。
さらに奥へ進むと、廊下は一つのドアに突き当たった。

俺はドアを開けたんだ。
「北崎……」
そこには北崎洋子が立っていた。
俺の体は硬直した。
ふいに、何かが風を切る音がして……。
俺の頭の上を何かが通り過ぎたんだ。
その音の方を見ると……?

大型ナイフが柱に刺さっている!
そして、そのナイフが視界から消えた。
その時の記憶は、それが最後なんだ。

泰明さんは黙ってしまった。
そして……。
えっ……!?
泰明さんの首が突然、床に転がったの。
そして私の意識は遠のいていった…………。


すべては闇の中に…
              終