晦−つきこもり
>三話目(真田泰明)
>AB6

とりあえず、石が戻ってきた。
その後も調査したけど、彼の足取りはいっこうにつかめなかったんだ。
俺は独自に北崎洋子に関して調査を始めた。
すると彼女の周りで、かなりの行方不明者が出ていることがわかった。
そして死んだ人も多い。

その多くの人の失踪や、死亡に彼女が関わっているのは確からしかった。
もしかしたら失踪している人たちも、もう死んでいるかもしれない。
でも、こんなに多くの人が死んだり、失踪しているのに、警察もマスコミもまったく興味を示さない。

俺も今回はじめて知ったんだ。
いったい何がそうさせているのか。
しかしそれ以上のことはわからなかった。
ごめん、電話だ。
『えっ、出川の足取りがわかった?
うん……、うん……、手帳……、そうかわかった。今からそっちに向かうから』

みんな、ごめん。
仕事だ、今の話の続きがわかりそうなんだ。
今度会った時には、続きを話せると思うから。

泰明さんはそう早口でいうと、部屋を出ていった。
家の外で車の音がする。
「あーあ、行っちゃった」
あきらかに不満の声を上げたのは、由香里姉さんだった。

「あらあら、いいだしたのは泰明さんなのにねぇ」
「ギョーカイジン、ギョーカイジン」
まったく、良夫の奴は気楽にいってるけどさ。
泰明さんだって、お仕事なんだから。

この会は、これでお開きになったけど、頑張ってね、泰明さん!
………………?
何かしら?
泰明さんの座ってた辺りに、一冊の本が落ちてるわ。
なんだ、ドラマの台本じゃない。
ええと……、タイトルは?

『石にまつわる怖い話・春の章』ですって……!?


すべては闇の中に…
              終