晦−つきこもり
>三話目(真田泰明)
>AJ4

そうだね、そうだといいんだけど……。
そんなある日、突然、北崎洋子が死んだのさ。
ドラマの撮影中だった。
彼女は毒入りのコーヒーを飲むシーンで、本物の毒を飲んで自殺したんだよ。
彼女の遺品からは、あの石は発見されなかった。

肌身離さず持ち歩いていたというのに……な。
その後、俺が、あらためて自分の石を見ると……。
俺の持っていた石が大きくなっていたんだよ。
いや、大きくなったというより、割れてたもう一つがくっついたような感じだ。
彼女の石が……?

……とも思ったが、けっきょく、この事件は多くの疑問を残したまま終わったんだ。
取材も未完成のまま。
まあ番組の方は、芸能界最大のミステリーって感じの特集にして、ある程度は注目されたんだけどさ。
俺の話はこれで終わりだ。

ただ、この石には、なんかとてつもない秘密があるんじゃないかと思うんだ。
これから何か悪いことが起きなければいいんだが……。

泰明さんの話は終わった。
話に登場した謎の男って、泰明さんじゃないのかしら……。
私には、そんな気がしてならなかった。
お母さんに聞いたことがあるんだ。
泰明さんは、子供の頃、夜ふらっとどこかに行くクセがあるって。

かっこいい泰明さんにも、そんな面白いクセがあるのよって笑ってた。
でも私の思い過ごしかな。
だって、もしそうだとしたら、泰明さんが彼女たち二人を争わせて番組に利用したってことになるもの。
泰明さんはそんな人じゃないわ。

それに、もしそうなら、みんなに話すわけないじゃない。
私は、そう自分にいい聞かせた。
でも……。
そういうクセのある人って、たいてい自分じゃ気付いてないんだよね……。
ま、いっか。
さあ、次の人の番だ。


       (四話目に続く)