晦−つきこもり
>三話目(鈴木由香里)
>C7

葉子の意見は、宝石?
鋭いなぁ。
そうなんだ。
黄色いバッグの中には、溢れんばかりにギッシリと宝石が詰まってたのよ。
随分重かったと思うな。
井上先輩は、バッグの中身に何の疑問も持たなかったけど、不思議に思わなかったのかなぁ。

この場だから、教えてあげるね。
二階堂さんて宝石店強盗団の一人だったのよ。
何年か前に、『世直し団』と名乗る未成年の犯罪が多発してたじゃん。
あの一連の事件の最後を飾った、宝石店荒らし。

その世直し団のリーダーが、この二階堂さんだったのさ。
二階堂さんはね、メンバーの一人が宝石を独り占めしようとしてたので、怒ってそいつごと滝に突き落としたの。
世直し団のメンバーはもう散り散りで、二階堂さんの他は生きてないはずだよ。

世間からもすっかり忘れ去られてるし。
それで、宝石を引き上げる気になったのよ。
え? これも先輩に聞いた話なのかって?
そんなことあるわけないじゃん。

井上先輩は雀の涙ほどの謝礼金を受け取って、ニコニコしながら帰っていったよ。
疑問の一つも持たずにね。
二階堂さんに関しては、私の方がずっと詳しいってことよ。
何故?
さぁ、なんでかしらね。

二階堂さんも、私も、宝石に魅せられた女だからじゃない?
誰も、二階堂さんが男だなんていってないでしょ。
さ、これで終わりよ。
次に行こうか。


       (四話目に続く)